1. TOP
  2. 最新記事
  3. コラム
  4. 食堂などの厨房を有する飲食業における衛生管理の基礎知識~チェックすべき5つのポイント~

食堂などの厨房を有する飲食業における衛生管理の基礎知識~チェックすべき5つのポイント~

食堂などの厨房を有する飲食業における衛生管理の基礎知識~チェックすべき5つのポイント~

 今回のコラムでは、食堂や、カフェ、レストランなど、厨房を使った飲食業を経営されている方が、最低限知っておきたい衛生管理の基礎知識について紹介します。これから飲食業を経営される方も必見の内容となっておりますので、ぜひ最後までご覧ください。



1.飲食業と衛生管理の関係とは



飲食業を行う上で、衛生管理は切り離せない関係にあります。
飲食店では様々な食材を使い、多くの人の手を介して調理され、お客様に料理が提供されます。この調理の流れと同時に接客も行われ、金銭の受け渡しも行われる中、衛生管理を怠ってしまうと、異物混入や食中毒が発生し、お客様からのクレームに繋がり、またお客様の健康を損ねてしまう可能性があります。

一度こうした事故を起こしてしまうと、お客様のお店に対する心象は悪くなり、再度来店される可能性が低くなってしまうばかりか、SNSやメディアが発達している現代では、事故が起きてしまったことが広く知られ、実際に事故に合われたお客様以外の来店機会も損ね、閉店に追い込まれてしまう可能性があります。
このようなリスクを避けるためにも、飲食店の営業を行う上で何が必要となるのかを把握し順守し、お客様が気持ちよく料理を楽しむことができるお店作りをしましょう。
ここではまず、飲食店営業において必ず知っておきたい衛生関連の法規を紹介します。



(1)食品安全基本法に基づく食品関連事業者の責任

 

飲食業を行う上で押さえておきたい法令の一つとして、食品安全基本法があります。

この法律では、「食品の供給行程の各段階において、国民の健康保護のために必要な措置が講じられるべき」と基本理念を定めており、食品の生産から加工の各段階で直接手を加える立場にある食品関連事業者の責務として「食品の安全性確保について第一義的責任を有している」と示しています。

飲食店事業者にはこのように、法令上においても衛生管理に対する大きな責任が課せられていることを、意識しておく必要があります。



(2)食品衛生法に基づいた営業許可



飲食業を行う上で具体的に必要となるものの一つに、食品衛生法に定められている「営業許可」があります。営業許可は都道府県知事による許可制度となっているため、営業を行う場合には、営業場所を所管する保健所に事前に届け出る必要があります。

営業許可の条件となる、厨房が備えているべき設備や、行うべき運用については、食品衛生法施行規則(別表17~21)に記載されており、例えば以下のような決まりがあります。

  • 施設及びその周辺を定期的に清掃し、施設の稼働中は食品衛生上の危害の発生を防止するよう清潔な状態を維持すること
  • 施設及びその周囲は、維持管理を適切に行うことができる状態を維持し、ねずみ及び昆虫の繁殖場所を排除するとともに、窓、ドア、吸排気口の網戸、トラップ及び排水溝の蓋等の設置により、ねずみ及び昆虫の施設内への侵入を防止すること
  • 食品又は添加物の製造、加工、調理、運搬、貯蔵又は販売の工程ごとに、食品衛生上の危害を発生させ得る要因(以下この表において「危害要因」という。)の一覧表を作成し、これらの危害要因を管理するための措置(以下この表において「管理措置」という。)を定めること
  • 原材料を種類及び特性に応じた温度で、汚染の防止可能な状態で保管することができる十分な規模の設備を有すること

また、この食品衛生法施行規則のほかにも、自治体毎に条例を設けている場合があるため、所管の保健所へ、事前によく確認しておくことをお勧めします。

営業許可には、期限が設定されており、営業許可期限満了後も引き続き営業される場合は、書面もしくは、厚生労働省HP内にある「食品衛生申請等システム」にて更新の申請をする必要があります。詳しくは管轄の保健所へお問合せください。


(3)食品衛生責任者



食中毒等のリスクを低減させるための行動をとる責任者として、店舗ごとに食品衛生責任者を定めなければなりません。食品衛生責任者になるためには、調理師や製菓衛生師などの資格を保有する方以外であれば、都道府県が定める講習会を受講する必要があります。講習会は6時間ほどで、受講後には修了証が発行されます。営業許可の申請時には資格の証明として、この修了証が必要となるため大切に保管してください。
食品衛生責任者に定める従業員が退職したり、異動により店舗運営から離れたりした場合には適切に所轄の保健所に「食品衛生責任者変更届」を提出し、更新が漏れることがないよう、注意する必要があります。



(4)HACCPに沿った衛生管理



 原則としてすべての食品等事業者は、令和3年6月1日から、HACCPに沿った衛生管理に取り組む必要があります。

 参考リンク:HACCP(ハサップ)|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

HACCPとは、食品等事業者自らが食中毒菌汚染や異物混入等の危害要因(ハザード)を把握した上で原材料の入荷から製品の出荷に至る全工程の中で、それらの危害要因を除去又は低減させるために特に重要な工程を管理し、製品の安全性を確保しようとする衛生管理の手法です。 

このように文字だけだと理解し難いのですが、簡単に表すと、衛生管理計画を作成し、記録を付けることで衛生管理を「見える化」することです。衛生管理計画は、食中毒の予防三原則である「菌をつけない、増やさない、やっつける」や、普段の店舗運営において気を付けていることを、手引きの記入例を参考に文字に起こすことで簡単に作成することが可能です。

この衛生管理計画に沿って調理の記録をつけていくことで、衛生管理を実施したことを証明できます。記録をつけることは従業員の衛生管理への意識を高め、衛生面で気を付けるべきポイントに注意してもらえるきっかけにもなりますので、店舗内でのルール化、励行することをお勧めします。




2.衛生管理で気を付けるべき5つのポイント



店舗

ここまで、飲食店営業の衛生に関する法規を紹介しましたが、事故を起こさない為には店舗で従事する方が、実際に厨房で働く際に衛生に気を付けなければなりません。このような観点から店舗運営において気を付けるべきポイントを5つに絞って紹介します。


(1)従業員の手洗い、身だしなみ、健康管理


従業員は料理の安全性に最も影響を与える立場にあります。そのため従業員の衛生状態は優先的に管理すべき事項です。


①手洗い

基本的なことなので、軽視されがちな部分ですが、食中毒の原因の多くは、手洗い不足によるものです。一番身近な予防策ですので、手洗いマニュアル等を活用し、きちんとした手洗いを実施しましょう。


②身だしなみ

従業員の身だしなみは料理の安全のためにも、お客様へ与える影響を良くする為にも重要です。髪の毛の混入を防ぐために帽子を被る、ユニフォームに粘着ローラーをかけるなど、店舗毎のルールに沿ってきちんとした身だしなみを徹底しましょう。


③健康状態

ノロウイルスやサルモネラなどに罹患している従業員が調理に携わった場合、店舗の食材や料理にウイルスや食中毒菌を付着させてしまい、食中毒事故に繋がります。こうした事故防止の為に、出勤時に健康状態を確認して体調の悪い従業員をあらかじめ把握して調理に従事させないようにしましょう。

また、不顕性感染者と呼ばれる、症状がない保菌者も存在します。定期的な検便検査の実施により、そのような方も調理に従事することがないようにしましょう。



(2)店舗の整理・整頓・清掃


店舗をきれいにすることは、お客様に気持ちよく食事をしてもらうためだけではなく、虫やネズミを寄せ付けないためにも効果的です。不要なものを片付け、必要なものの配置を決めることで、清掃のしやすい店舗にして、きれいな状態を維持しましょう。



(3)調理器具の洗浄・消毒



調理器具の洗浄や消毒が不十分なために、調理器具を介して食中毒菌の汚染が広がったり、アレルゲンが混入する可能性があります。器具の洗浄・消毒は使用の都度行いましょう。

また、洗浄用具や洗剤、洗浄に用いる水の温度により、汚れの落ちやすさは変わってきます。これらを汚れにあわせて適切に選ぶことも重要です。


(4)食材・料理や食器の取扱い



食材や料理、食器の取扱いも重要なポイントとなります。ここでは「受け取り」、「保管」、「調理」、「提供」の段階毎に説明します。


①食材の受け取り

食材は受け取り時に鮮度や温度を確認しましょう。特に冷蔵や冷凍の食材が高い温度で納品された場合、すでに食材中に食中毒菌が繁殖している可能性があります。そのような場合には、そのまま調理に使用せず、返品することをお勧めします。


②食材・料理・食器の保管

食材や料理、食器は床からの跳ね水に注意し、床から60cm以上の高さのある場所で保管しましょう。

また、食材の腐敗や食中毒菌の増殖を抑えるために適切な温度で保管し、日付管理により、味や品質、安全を保てる期限内で使用できるようにしましょう。

また、食材の誤使用を防ぐため、生食用と加熱用などの用途の明確化など、保管方法を工夫しましょう。


③食材の調理

加熱を行う料理の場合、その加熱が食中毒菌やウイルスを殺菌する工程を兼ねていることがよくあります。加熱不十分な商品を提供することがないよう、料理の見た目や肉汁の色、温度測定などの方法で十分な加熱が行われていることを確認しましょう。

まな板・包丁など調理器具は、加熱前の汚染度の高い食材に用いるものと、加工後の提供状態に近い食材に用いるものに分けて使用し、調理器具を介した汚染を予防しましょう。


④料理の提供

提供のタイミングは、安全な料理を提供できているかをチェックすることのできる最後の砦です。異物が含まれていないか、アレルギーを持っている方への提供品として適切か、など、安全な料理が提供できているか確認を行いましょう。



(5)従業員への教育

 

最後のポイントは従業員への教育です。

(1)~(4)のポイントが実施できるかどうかには、実施する従業員の衛生に対する意識が大きく影響します。

手洗いなどのルールを教える際に、食中毒事故が起きたらどうなるのか、お客様から見てどう思うか、といった「もしも」を考える機会を設けることで、そのルールの意味を考えるように教育しましょう。



3.飲食業における食中毒のリスク



令和4年度の食中毒の発生事件数のうち、56%は飲食店で起きており、次点の家庭(19%)を大きく上回り、大きく上回っております。それだけ飲食店という場所は食中毒事故を起こしやすい場所でもあります。

美味しい料理と素敵な空間の提供により、お客様に食事を楽しんでもらう場である飲食店が、食中毒発生の場にならないよう、衛生管理にも取り組んでください。



4.大きな問題が発生する前にプロの視点でのチェックを実施しましょう


 

食中毒を起こさないよう普段から注意をしているものの、ふとした気のゆるみが原因で事故が発生してしまうケースが多くあります。

食中毒を未然に防止するために、株式会社BMLフード・サイエンスでは、飲食店の厨房を衛生の専門家としての目線でチェックするサービスを行っています。

ここまでにお伝えしたような、従業員の衛生状態や、食材・料理や食器の取扱い状況などのポイントを確認し、事故が発生しそうな危険な場所を見つけ出し、どのように改善すれば食中毒事故が起きにくくできるかをお伝えしています。

複数店舗を運営している企業であれば、店舗ごとの課題の発見と共に、グループ全体の課題の発見と改善もサポートしています。





5.まとめ


 

飲食業で衛生管理を怠ってしまうと食中毒事故に繋がりかねません。最悪の場合、お客様の命を奪ってしまう場合もあるため、決して衛生管理を軽視してはいけません。

今回は、飲食業を行ううえで、気をつけるポイントを紹介しましたが、実際に営業するなかで、自分たちが必要なことを実施できているのか不安に感じることがあると思います。

当社の店舗衛生点検サービスでは、それらの不安を解消することが可能です。一度、専門的な視点でチェックを受けてみてはいかがでしょうか。

 

参考資料:令和4年(2022年)食中毒発生状況(厚生労働省)



食品衛生の目的

関連コラム:飲食店における食品衛生の目的とは?必要性と対策について解説

飲食店における食品衛生の目的や食品衛生対策のポイントをご紹介します。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

コンサルティング、認証取得支援・適合証明、検査サービスに関するご相談は、お気軽にお問い合わせください。

資料ダウンロード

お役立ち資料ダウンロード

食品衛生および品質管理に関するトピックを紹介するお役立ち資料を提供しています。

依頼・お問い合わせ

当社サービスに関する依頼・お問い合わせ

コンサルティング、認証取得支援・適合証明、検査サービスに関する幅広いご相談を承ります。

セミナーバナー