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食品工場における異物混入対策とは?原因と対策方法について解説

食品工場における異物混入対策とは?原因と対策方法について解説

食品工場ではさまざまな原因で異物混入が発生する可能性があります。

異物混入は、食品の品質や安全性を低下させるだけでなく、消費者の信頼を失うことにもつながります。そのため、食品工場では異物混入が起こる前に、その予防対策を行っておくことが重要です。

では、食品工場で異物混入が発生してしまう原因とは何でしょうか?また、異物混入を防ぐためにどのような対策を行うべきでしょうか?この記事では、食品工場における異物混入の原因と対策のポイントをご紹介します。

1.異物混入対策の重要性

どのような製品であっても異物が混入していれば「品質が低い」という評価を受けやすく、顧客満足度は下がってしまいます。特に、食品は消費者の口に入ることから、ほかの製品に比べて異物混入に対する嫌悪感は強い傾向にあります。

異物混入時の影響は健康被害だけにとどまらず、心理的なストレスや不安にもつながります。

消費者が異物に気づかず製品を口にしてしまった結果、口の中や喉を怪我したり、歯が欠けたりといった健康被害を引き起こす恐れも十分にあります。また、毛髪やホコリ、害虫や害獣の糞や死骸などの異物は腐敗菌や病原菌、ウイルスを含んでいるため、混入によって食品の腐敗や変色を発生させ、食中毒の発生原因となり得ます。

さらに、異物混入によって被害を受けた方に対する補償を行う必要がありますし、他の製品にも混入が疑われる場合には製品の回収や廃棄を検討する必要がでてきます。また異物混入の事実がSNSやマスコミ等により、実際に異物混入品を購入した消費者以外が知ることになった場合には影響はさらに広がります。企業やブランドの信頼やイメージが下がり、消費者に製品が選ばれにくくなる可能性もあります。そのような場合には、異物混入がきっかけとなって業績悪化や倒産につながりかねません。

このような事態を引き起こさないため、あらかじめ異物混入に対して十分な対策を講じることが重要です。

 

 

2.食品工場で異物混入が発生する原因

では、食品工場において、食品に異物が混入してしまう原因とはどのようなものがあるのでしょうか?主な要因は従業員によるもの、害虫・害獣によるもの、施設や設備によるものに分かれます。それぞれの原因について詳しく見ていきましょう。

 

(1)従業員による異物混入

従業員の作業ミスやルール違反を原因として異物混入が発生することがあります。

たとえば、身だしなみや持ち込み品のルールに従わず、衛生帽子や衛生白衣、手袋などを適切に使用しなかったり、不要なものを工場内に持ち込むことで、毛髪や、付け爪、ピアスや指輪などのアクセサリー、ボタンやペンなどが製品に混入することにつながります。

製造に必要な道具や、清掃や洗浄に使う清掃用具の使用方法を誤ったり、それらの使用前後の確認を怠ることで、例えば手袋の切れ端や、包丁の欠けた刃、機器から脱落したボルト、清掃ブラシから抜け落ちた毛などが混入します。劣化した道具や清掃道具を使い続けることは、部品や破片を混入させる可能性をさらに高めます。

また、農産品や水産品等を扱う際には製造工程として枝や皮、骨、虫などの夾雑物を取り除く検品を含めることがありますが、その検品作業を怠ることで、本来は取り除くべき夾雑物がそのまま製品へ混入してしまうケースもあるでしょう。

さらに、消毒剤や洗浄剤などの化学物質の誤使用による異物混入にも注意が必要です。 これらの物質は適切に管理されていないと残留や、水や調味料と誤って使用し、製品へ混入する恐れがあります。 消毒剤や洗浄剤は人体に有害な影響を及ぼす可能性が高く、化学的リスクとして重大な問題です。

 

(2)害虫・害獣による異物混入

食品工場の天井や床面、壁面などに破損があったり、窓や扉などが開放されている時間が長かったりなど、害虫や害獣が侵入できる経路が存在していると、工場内へゴキブリやハエなどの害虫や、ネズミ、ハトなどの害獣が侵入する可能性があります。

さらに整理・整頓が不十分で、それら害虫や害獣にとって隠れやすい場所があれば、そこを住みかとすることができ、廃棄物を長期間捨てずに放置していたり、洗浄が不十分で残渣が残っていたりすると、それらを餌として工場内で繁殖していきます。

食材が密閉されずに保管されている場合や、製造中の製品に覆いがされずラインに滞留した場合などに、害虫・害獣は食材や製品に誘引されます。害虫はそれ自体が異物となり、害獣は糞や毛などが異物として食品へ混入します。

 

(3)施設・設備による異物混入

工場の建屋や構造などの施設や、加工装置といった設備に起因する異物混入もあります。

工場の建屋自体が材質や劣化の状況によっては、木片や塗装片などが製品へ落下する恐れがあります。清掃の容易さに対する配慮がされていない構造で、例えば天井が高い場合には、清掃不足による埃の蓄積を招き易くなります。

加工装置が適切に入れ替えやメンテナンスがされず、劣化したまま使用することで、機器の破損や部品の落下に繋がります。機器の分解洗浄やオーバーホールなどのメンテナンスの後に現場確認や洗浄を怠ることで、現場に残した不要な部品や汚れが製品に混入してしまったケースもあります。

また、異物の除去のために設けたフィルターやふるいの破損、マグネットトラップの磁力低下、金属検出機やX線異物検出機、色彩選別機などの機器の異常により、異物が検出できずに製品へ混入してしまうことも考えられます。

 

 

3.異物混入を防ぐ、具体的な対策

では、このような異物混入を防ぐためには、どのような対策を講じれば良いのでしょうか?それぞれの原因に対する対策を紹介します。

 

(1)従業員による異物混入への対策

まずは、従業員の身だしなみが重要です。つけ爪やマスカラなど、異物になりやすい化粧は控えます。衛生帽子の中に髪の毛を1本も残さないように正しく収めてマスクを着け、身に着けているアクセサリーや時計などの装飾品を外し衛生白衣を着用します。衛生帽子や衛生白衣は定期的に選択を行い、汚れやほつれの無いものを使用します。粘着ローラーで衛生白衣に付着した毛髪や埃などを除去してから、エアシャワー設備がある場合は、必ずエアシャワーを通過した上で工場内に入らせるよう徹底します。

また、できるだけ製造ラインに余計な物を持ち込ませないことも大切です。鉛筆やボールペンといった文具類や携帯電話やスマートフォンも含め、許可したもの以外は何も持ち込ませないようにしましょう。

製造工程として検品を設けている場合には、対象の夾雑物を確実に取り除くことができるよう、検品にかける人数や時間を明確にし、交代制にすることや、検品場所の照度を明るくすることで作業者の負担を軽減します。また検品前後の原料が混在し誤使用されることがないよう、検品の前後で番重の色を変えるなどの工夫をすることも予防策として有効です。

さらに、従業員へ定期的に衛生管理や異物混入、作業手順をテーマとした研修を実施し、異物混入に対する意識を高め、作業手順や確認手順を順守させることで、異物混入を防ぎましょう。

 

 

(2)害虫・害獣による異物混入への対策

害虫や害獣による異物混入を防ぐためには、「侵入させない」ことと、「繁殖させない」こと、という2つの側面での考え方が必要となります。

製造エリアの天井や壁面、床面の穴などを塞ぎ、入場口には防虫のれんや、エアカーテンを設置し害虫や害獣が侵入しづらい構造にします。入退場時はドアを素早く開閉し、確実に閉まったことを確認してその場を離れることを従業員に習慣付けさせることも大切です。窓は極力開閉せず、開閉が必要な場合は網戸を設置します。扉や窓のガラス部分から漏れる光により害虫が誘引されるため、紫外線カットフィルムで覆い、誘因を防止します。原材料などの納品時に使われていた段ボール箱には、運搬中に害虫やその卵などが付着している可能性もあるため、製造エリアまで持ち込ませないことも有効です。

工場内での繁殖予防のため、整理・整頓・清掃により害獣や害虫のエサとなるものを取り除き、住みかとなり得る場所を無くしていきましょう。残渣などの生ごみが害虫・害獣のエサとならないよう、密閉度の高いゴミ箱に廃棄し速やかに搬出しましょう。

製品トラブルなどで製造が一時的に滞留した場合には、ライン上の半製品に覆いを行ったり、回収することで露出時間を可能な限り短くします。

侵入や繁殖をしてしまった害虫や害獣は、それらが異物の原因となる前に駆除する必要があります。駆除にはトラップの設置や殺虫剤、殺鼠剤の使用等の手段がありますが、これらの使用が原因となって異物混入に繋がる可能性もあるため、専門業者に相談をして、安全で効果的な対応を行うことをお勧めします。

 

(3)施設・設備による異物混入の対策

施設や設備を原因とする異物混入の対策には、それら施設や設備の清掃・洗浄、メンテナンスが欠かせません。

清掃や洗浄は予め、その頻度や方法を決めておきましょう。洗剤の種類や濃度、道具、手順は落とそうとする汚れに適したものを選びましょう。食品に接する機器の洗浄に使用するすすぎ水は飲用水として適合したものを使用してください。

メンテナンスも清掃や洗浄と同様に、その頻度や方法を予め決めておくことが重要です。故障や破損などの有事に対して対応する事後措置ではなく、予防措置としてメンテナンスをしておくことで突発的な製造の遅れや欠品を防ぐこともできます。

また、そもそも清掃やメンテナンスをしやすい施設や設備にすることで、適切な状態を保ちやすくなると共に、現場の作業者の負担を大きく減らすことができます。

必要に応じて、洗浄後やメンテナンス後の製造開始すぐの製品は異物を含んでいる可能性を考え製品として出荷しない場合もあります。また、使用頻度の低い設備を使用する場合には保管中に埃の蓄積や劣化をしている可能性もあるため、使用する前に点検や洗浄を行うことをお勧めします。

フィルターやふるいは使用前後に破損の確認を行い、マグネットトラップや金属検出機、X線異物検出機、色彩選別機などは異物除去の能力確認を定期的に行います。この確認により、これらの装置の異常をタイムリーに検知し、これらの装置が常に機能している状態にしておくことができます。

洗浄やメンテナンスの後は、作業の記録を正確に残しましょう。また、工場長や品質管理担当者は従業員にそれらを任せきりにするのではなく、実際に洗浄やメンテナンスが行われていることや、記録が残されていることを定期的に検証し、それらルールが適切に運用されていることを確認しましょう。

 

 

4.まとめ

食品工場における異物混入のリスクには、大きく「従業員による異物混入」「昆虫などによる異物混入」「施設設備による異物混入」の3つがあります。そして、その3つに対する対策も解説しました。

このような対策を確実に行うことで、異物混入は起きづらくなるでしょう。 しかしその対策を設置し徹底するためには、様々な原因とその背景や、多くの対策事例について知っている必要があり、自社だけの知見で行うことは容易ではありません。そこで、食品衛生コンサルティングサービスを利用することも賢い選択肢の一つとなります。

食品衛生コンサルティングサービスとは、食品工場の品質管理や衛生管理に関して専門的な知見を元に支援を行うサービスです。異物混入に対して「どのようなことに気を付けるべきか」や「どのような対策が効果的か」といったことを豊富な経験をもとにアドバイスを受けることができ、効果的な対策の設置やマニュアル作りに活用頂けます。

従業員に対するトレーニングにもコンサルティングの活用は効果的です。どのような場合に異物混入が起きるのかや、異物混入が起きた場合の危険性、予防のためにできることなどを従業員にとって分かりやすく順序立てて伝えることで、従業員のルールの順守や意識付けに役立ちます。

また、万が一、異物混入によるクレームが発生した場合でも、異物の特定や今後の防止策に関する支援を得ることができます。異物混入時やその後の対応のフォローを期待でき、特に食品関連の法律に基づいた的確なアドバイスを受けられる点は、大きな安心材料となるでしょう。

BMLフード・サイエンスでは、食品衛生コンサルティングを行っております。 厨房や工場の点検、監査から、関連法規に照らした食品等の表示確認、品質管理の仕組み構築や教育研修など、多種多様なサービスを提供しており、異物混入を防ぐための品質管理システムを構築支援することも可能です。

詳しくは、「食品コンサル」のページをご覧ください。

このコラムの監修者

藤田 孝

株式会社BMLフード・サイエンス 技術顧問
東京海洋大学 大学院 非常勤講師

東京都生まれ。1986年にBMLフード・サイエンスに入社し、食品工場、スーパーマーケット、外食業などのHACCP構築支援に携わるなど、⾷品業界における幅広い知識と経験を有する。 現在は年間約180工場の監査業務、認証取得のコンサルティングに携わり、その他、講演などを行う。 趣味は海釣り。
資格:FSMS主任審査員(IRCA)、QMS審査員補(JRCA)
   PCQIリードインストラクター(FSPCA)
   HACCPリードインストラクター(JHTC)

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