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手洗いの重要性

手洗いの重要性

手洗いはなぜ大切なのでしょうか。子供のころから当たり前のように手洗いをおこなっていますが、単なる習慣ではなく感染症を防ぎ、自分自身はもちろん周りの人々の健康を守るためにも不可欠な行為です。私たちの生活環境には目に見えない無数の微生物が潜んでいます。これらの菌は手に付着し、そこから食品に混入することで食中毒を引き起こす可能性があるのです。

食中毒が起こると腹痛や、高熱などの症状があり日常生活に大きな支障をきたすことがあります。また重症化すると命に関わる場合もあります。

1.手洗いに関わる食中毒

手洗いに深く関連する食中毒のひとつはブドウ球菌食中毒です。これは黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)に汚染された食品中で産生されたエンテロトキシン(腸管毒)を摂取することにより起こります。潜伏期間が短く(平均3時間)、悪心・嘔吐、下痢などの症状がみられます。黄色ブドウ球菌は、自然界に広く分布しており、健康な人の鼻腔や皮膚などにも存在するほか、化膿菌としても知られており、手荒れや傷口などには特に多く存在しています。

 

2. 食中毒統計~ブドウ球菌食中毒~

厚生労働省の食中毒統計資料によると、2023年(令和5年)我が国では年間1021件の食中毒事例があり、そのうち黄色ブドウ球菌による食中毒は20件発生しています。その多くの事例では原材料由来の黄色ブドウ球菌汚染によるものだけでなく、ヒト由来の黄色ブドウ球菌が手指を介して食品を汚染することによって発生していると考えられています。


(1)ブドウ球菌食中毒発生事例

手洗い不足が原因で発生したブドウ球菌食中毒事例

■2024年2月 兵庫県内の飲食店が販売した恵方巻による食中毒(発症者数150人)

手洗いが不十分であったことと、常温で長く保管していたことで菌が爆発的に増殖した。

 

■2024年8月 神奈川県内の百貨店で販売されたうなぎ弁当による食中毒(発症者数159人)

手袋を着用しておらず、手を洗わずに調理した人もいた。


(2)過去10年間のブドウ球菌食中毒発生場所

過去10年間のブドウ球菌食中毒の発生場所をみると飲食店や仕出し屋が多く、全体の6割強を占めます。加熱調理後に従事者の手指により成形や盛り合わせが行われる際、従業者の手指から食品が汚染されることが考えられます。

 

 

黄色ブドウ球菌自体の耐熱性は高くないものの、産生されるエンテロトキシンは耐熱性が高く、通常の加熱調理では活性を失いません。したがってブドウ球菌食中毒を予防するには、食品中でエンテロトキシンを産生させないよう、黄色ブドウ球菌による食品の汚染や食品中での増殖を防ぐことが重要です。

 

3.食中毒予防の3原則

食中毒予防の3原則は①つけない ②増やさない ③やっつける です。

このうち①つけない は手洗いで防ぐことが可能です。

家庭や調理現場における黄色ブドウ球菌による食中毒を防止するためには手洗い・消毒が有効です。黄色ブドウ球菌だけでなくノロウイルスなどさまざまな菌やウイルスに対して手洗いは効果を発揮します。また手荒れやけがによる傷には黄色ブドウ球菌が潜んでおり、素手で食材に触れてしまうと付着・増殖の恐れがあります。必要に応じてゴム手袋などを活用することで菌の付着を防ぐことができます。


 

4.正しい手洗い方法

①流水でよく手を濡らした後、石鹸やハンドソープをつけ、手のひらをよくこすります。

②手の甲をのばすようにこすります。

③指先・爪の間を念入りにこすります。

④指の間を洗います。

⑤親指をねじりながら洗います。

⑥手首も忘れずに洗います。

手洗いの後はエタノール含有消毒薬による手指消毒を行います。十分な量を取り、手洗いと同様の流れで各部位にすりこみ、よく乾燥させます。



5. 手洗いのポイントを押さえよう

手洗いで洗い残しの多い場所は指先、爪と皮膚の間、手の平のしわ、親指の付け根、手首です。汚れが残りやすい場所を意識することで洗い残しを減らすことができます。

手洗いは流水だけではなく石鹸やハンドソープを用いることが望ましいとされます。流水のみで15秒手洗いすると、ウイルス残存率は手洗いなしの場合に比べて1%に減少します。ハンドソープで10秒または30秒もみ洗い後、流水で15秒すすぐと残存率は約0.01%まで下がることが報告されています。(森功次ら、感染症学雑誌80、496-500(2006))

手洗いを十分にしていても、手荒れや傷口があると黄色ブドウ球菌が潜んでいることがあり、目に見えるものではありません。調理現場や工場においては従業員の手指の衛生状態が食中毒発生の原因となることもあります。そのような場合は手袋をつけて従事するなど、手荒れや傷口の箇所が直接食品に触れることを避けるような対応が必要です。


6. 弊社BMLフード・サイエンスでできること

ここまでブドウ球菌をはじめとした食中毒予防のための手洗いの方法や注意点について記載しましたが、実際に手洗いがきちんとできているか?は細菌レベルでは実際に検査してみないとわかりません。もし自社で検査を行う場合には検査施設や人員が必要となります。検査を外部委託することで省力化・コスト削減が可能となります。弊社BMLフード・サイエンスが提供するサービスについてご紹介します。


検査・コンサルティングによる店舗や施設の衛生面の向上:

工場や飲食店厨房内の点検を行い、従業員の手指拭き取り検査や採取した食品サンプルの検査を行います。検査結果に基づいて経験豊富なコンサルタントがアドバイスします。必要に応じて衛生講習会等を実施いたします。



従業員教育支援:

工場や飲食店店舗における食中毒を防ぐためには従業員への衛生教育が必要不可欠です。弊社では手洗いをはじめとした食品衛生に関する教育ツールを用意しております。多言語対応、アニメーションを用いた動画で外国籍の方にも食品衛生について理解を深めることができます。



「個人衛生管理」に関するお役立ち資料を公開しております。



参考文献

厚生労働省 ファクトシート(ブドウ球菌食中毒)

厚生労働省 食中毒統計資料

厚生労働省 手洗いについて

衛生的な手洗いについて

森功次ら、感染症学雑誌80、496-500(2006)

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