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冬に多く発生するウイルス性の食中毒とは?実例と対策のポイント

冬に多く発生するウイルス性の食中毒とは?実例と対策のポイント

 寒い冬は、温かい鍋料理や熱々の飲み物など、体の中から温まる食事が嬉しい季節です。

 しかし、冬は気温が低く、乾燥しやすくなるため、ウイルス性の食中毒が多く発生しています。今回は、冬に多く見られるウイルス性食中毒について、その原因や具体的な事例、そして予防策を詳しく解説していきます。

1.冬の食中毒の発生状況

厚生労働省の食中毒統計資料によると特に冬季(12月~2月)におけるウイルス性食中毒の発生患者数が増加傾向にあります。 

病院物質別患者数の月別発生状況

 

令和5年食中毒発生状況資料 病因物質別月別発生状況(患者数) 
出典:病因物質別患者数の月別発生状況(全体事例 令和3年~令和5年)より
https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001213032.pdf

 

2. 冬にウイルス性の食中毒が発生する理由

 冬は一般的に気温が低く、乾燥しやすくなります。

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 さらに、暖房器具の使用が増えるため、室内がさらに乾燥し、ウイルスが空気中に浮遊しやすくなります。
食中毒を引き起こすウイルスには低温・乾燥の条件下で長期間生存することができるものも存在するため、感染が広がりやすくなります。

 ウイルス性食中毒には、感染力が非常に強く、短時間で多くの患者が発生する特徴があるものもあります。特に、一度に多くの食事を提供する施設(学校、病院、高齢者施設など)では、大きな問題となります。


3. ウイルス性の食中毒の種類と実例

 

(1)ノロウイルス

 令和5年 病因物質別月別食中毒発生状況の患者総数において、1位(5,502名)。

 ノロウイルスは、低温環境や乾燥に強い特徴があり、感染力が非常に強いため、ごく少量のウイルスが体内に侵入しただけでも感染することでも知られています。そのため、汚染された食品を食べて感染する経口感染のほか、感染者のふん便や嘔吐物に触れて感染する接触感染や、感染者の嘔吐物が床に飛散した際などに飛沫を吸い込むことで感染する飛沫感染、感染者のふん便や嘔吐物が乾燥し空気中をただよったものを吸い込み感染する空気感染の経路が知られています。このような特徴があることから冬場の気温が低く、乾燥しやすい11月から3月頃に流行する傾向があります。

 感染力の高さから食中毒リスクが高く、「大量調理施設衛生管理マニュアル」にはノロウイルスに関する内容も明記されています。詳しくは、以下コラムもご参照ください。
 

ノロウイルスの特徴


関連コラム:現代において撲滅が困難な食中毒・感染症 ―ノロウイルスの特徴と食中毒対策―

現代において撲滅が困難な食中毒・感染症―ノロウイルスの特徴と食中毒対策―をお伝えします。

ノロウイルス消毒


関連コラム:ノロウイルスに対して有効な消毒(不活性化)とは

ノロウイルスの感染を広げないためには、正しい知識と対策が重要となります。

主な原因食品:カキなどの二枚貝やノロウイルスに汚染された水や食品

※感染者が、用便後の手洗いが不十分なまま料理をすると、食品がウイルスに汚染され、その食品を食べることにより、感染が引き起こされるおそれがあります。

症状: 吐き気、嘔吐、下痢、腹痛、発熱

潜伏期間: 1~2日(24~48時間)

事例:

2024年11月:京都府内の飲食店で製造された弁当を食べた11名が嘔吐や下痢などの症状を訴えた。うち4人と飲食店従業員7人の便からノロウイルスが検出された。調理従事者から感染したとみられている。 

2024年8月:大分県内の旅館において、敷地内の湧水を飲んだり、湧水を使用した料理を食べた618名が下痢や嘔吐などの症状を訴えた。湧水の源泉からノロウイルスが検出され食事や湧水が原因と推定された。

2021年2月:ある調理従事者が嘔吐の症状を呈していたが消化不良によるものと認識し、その後症状が軽快したため、複数の飲食店で勤務しマグロの解体などを行った。結果、各々の店舗で同一のノロウイルス遺伝子型による食中毒事例が発生した。

2017年2月:東京都内の小中学校7施設において同日に食中毒が発生し、患者数1000名を超える大規模食中毒が発生した。原因は給食に使用された刻み海苔と特定された。納入元の海苔加工業者施設のトイレや裁断機からノロウイルスが検出された。裁断作業の従事者は吐き気の症状があったにもかかわらず、素手のままで作業を行ており汚染へと繋がった。

参考資料:
東京都保健医療局 食品衛生の窓 https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/shokuhin/micro/noro.html

参考事例:
【ノロウイルス】食中毒 嘔吐や下痢 弁当 京都 (shokukanken.com)
大分・由布市の旅館で618人食中毒、湧水の源泉からノロウイルス検出…料理や飲用として使用 : 読売新聞 (yomiuri.co.jp)
同一の調理従事者が勤務した複数の飲食店におけるノロウイルスGⅡ.17[P17]による食中毒事例 (niid.go.jp)
No.17016 学校給食で提供された刻みのりによるノロウイルス食中毒 – H・CRISIS (niph.go.jp)  006-012.pdf (nihs.go.jp)


(2)ロタウイルス

 ロタウイルスは、主に乳幼児に急性胃腸炎を引き起こす代表的なウイルスであり、感染力が非常に強い。概ね5歳までにほぼ100%のヒトがロタウイルスに一度は感染すると考えられており、2月~3月にかけて特に乳幼児・小児に感染流行しやすいです。(ロタウイルス感染下痢患者は便1g当たり1,000億から1兆個含まれているとされています。)

主な原因食品: 二枚貝やロタウイルスに汚染された水や食品

※ノロウイルス同様、ウイルスに感染した食品取扱者を介して食品が汚染されるケースが多く、原因食品が特定できないことが多くなっています。

症状: 下痢、吐き気、嘔吐、発熱、腹痛

※通常1~2週間で自然に治癒するが、脱水がひどくなるとショック、電解質異常、時には死に至ることもある。通常は発熱(1/3の小児が39度以上の発熱を認める)と嘔吐から症状が始まり24~48時間後に頻繁な水様便を認める。

潜伏期間: 2日間

事例:

2023年1月:栃木県内高齢者施設で調理された食事を食べた利用者など92名中28名が下痢や嘔吐、発熱などの症状を訴え、ロタウイルスによる食中毒にかかっていることが栃木県の調べで分かった。そのうち利用者の80代の女性1人が死亡。

2006年3月:新潟県内の飲食店が提供したちらし寿司(出前)を食した66名中30名が翌日から下痢、発熱、腹痛などの症状を訴えた。患者6名全員及び寿司店の調理従事者2名のうち1名の従業員の便からA群ロタウイルスが検出された。調理従事者は、調理した当時は健康状態に異常は無く、調理従事者がウイルスを保有していたか、あるいは共通の感染源が飲食店にあり、従事者を介して食品汚染が起こったものと考えられた。

2001年11月:群馬県内の飲食店で製造された大福を食べた13名が、吐き気、嘔吐、下痢などの症状を訴えた。患者便からロタウイルスが検出された。

2000年4月:同一飲食店が調理した仕出し弁当を食べた2グループおよび同施設で喫食した1グループ計59名中22名が食中毒様症状を訴えた。患者7名、無症状の調理従事者2名からA群ロタウイルスが検出された。

参考資料:
国立感染症研究所 感染症疫学センター 
ロタウイルス感染性胃腸炎とは https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/3377-rota-intro.html

参考事例:
ロタ(令和3年 栃木県南)
https://www.pref.tochigi.lg.jp/e07/life/shokuseikatsu/chuudoku/datar5.html
https://news.livedoor.com/article/detail/23599275/
ロタ(2006年3月 新潟)https://idsc.niid.go.jp/iasr/27/316/pr3161.html
2001年11月 ロタウイルスによる食中毒事例(群馬県) https://h-crisis.niph.go.jp/archives/82963/
2000年4月 飲食店でのA群ロタウイルスによる食中毒(島根県) https://h-crisis.niph.go.jp/archives/82967/


(3)サポウイルス

 サポウイルスはノロウイルスと同じカリシウイルス科に属するウイルスでヒトの小腸粘膜で増殖します。「サポ」は発見された地名(札幌)に由来しています。

 これまで、小児の主として散発的な感染性胃腸炎の原因となると考えられてきましたが、近年食中毒をはじめとした集団感染事例の報告が確認されております。

主な原因食品: カキを含む二枚貝の生食やサポウイルスに汚染された食品

※調理従事者の関与が強く指摘されています。また、学校や保育園などで、生カキを食べていないのに集団発生する事例があり、原因として人から人への二次感染が疑われています。

症状: 下痢、おう吐、発熱

潜伏期間: 1~2日(24~48時間)

事例:

2024年4月:岩手県内の飲食店が製造した弁当を食べた10歳未満から70歳代の16人が、腹痛や吐気などの症状を訴えた。患者のうち4人と調理従事者1人の便からサポウイルスが検出されたため、当該飲食店を原因とするサポウイルス食中毒と断定された。当該飲食店は3日間の営業停止処分となった 

2019年3月:神奈川県内の幼稚園に通う園児等14名及び保護者13名が県内飲食店を利用したところ、2日後に園児10名、保護者12名がおう吐、下痢の症状を訴えた。そのうち1名は自宅で脱水症状による意識不明になり、救急搬送され、3日間入院した。患者に共通する食事は当該飲食店のみであり、患者14名及び調理従事者1名の便からサポウイルスが検出された。園内で嘔吐、下痢の発症はなく当該飲食店の提供した食事を原因とする食中毒と断定した。

2018年11月: 島根県内の自校調理施設を有する中学校で、胃腸炎(主な症状は腹痛, 発熱, 嘔気)により欠席する生徒が多くみられた。調査の結果 患者の発生は28~30日(ピークは29日)に集中しており, 単一曝露であることが強く疑われた。患者数は全数175名(生徒155名, 教職員20名)中, 56名(生徒52名, 教職員4名)。検便検査を行った8検体全てにおいてサポウイルスが陽性となった。自校調理の給食が食中毒の原因と考えられたため, 調理員7名についても同様の検査を実施したところ, うち2名の検体が陽性であった。なお, 調理従事者に体調不良を訴える者はなかった。

参考資料:
東京都保健医療局 食品衛生の窓 https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/shokuhin/micro/sapo.html

参考事例:
岩手県 弁当 https://www.shokukanken.com/post-16988/
神奈川県 幼稚園と保護者 飲食店での食中毒 No.19015 サポウイルスによる集団食中毒事例 – H・CRISIS (niph.go.jp)
島根県 自校調理施設を有する中学校での食中毒 https://www.niid.go.jp/niid/ja/intestinal-m/intestinal-iasrd/8859-471d03.html

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4.食中毒を防ぐための対策3つのポイント

 

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(1)つけない

①食材の管理

  • 原材料の購入、受け入れ時には、製造者への監査や抜き打ちでのチェックなどにより、それらが衛生的な取り扱いで製造され、納品されていることを確認する。
  • ノロウイルスに感染している可能性が高い二枚貝などの食材が他の食材を汚染することが無いよう、区別して保管する。

②従業員の衛生

  • ウイルスに対して効果がある石鹸や消毒剤を用意する。
  • 従業員向けの手洗手順を定め、トイレの使用後や、調理前には手をよく洗い、手洗後は消毒を行う。なお、ノロウイルスに対しては石鹸による手洗とすすぎを2度行う「2度手洗い」が有効であることが確認されているため、調理前の手洗は2度手洗いを採用する。
  • 従業員に対し定期的な健康診断、検便検査を受けさせ、食中毒菌を保菌している可能性がある従業員を調理に従事させない。
  • 従業員向けの服装や身だしなみをルール化し、適切な頻度で洗濯された清潔な制服を身に付け、髪を束ね、爪を短く切らせる。指輪などの装飾品は調理中は外させる。

ノロウイルスの特徴


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(2)やっつける

 加熱殺菌:二枚貝等ノロウイルス汚染のおそれのある食品の場合は85~90℃で 90秒間以上で十分に加熱する。

(3)冬ならではの対策

  • ウイルス性食中毒が疑われる人のふん便や嘔吐物の処理の場合は、処理をする人自身への感染と施設内への汚染を防ぐため、あらかじめ使い捨て手袋やエプロン、マスク、次亜塩素酸ナトリウム等を用意し、迅速、確実に処理を行う。
  • 乾燥対策: 室内の湿度を高める。
  • 換気: 定期的に室内を換気し、空気を清浄に保つ
ノロウィルス


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食中毒防止には従業員一人ひとりの協力が不可欠です。従業員向けに必要な食品衛生教育についてはこちら


5.最後に


食中毒対策は、日々の積み重ねが重要です。 しかし、自社だけで全てを完璧に行うのは難しい場合があります。そこで、衛生管理の専門家によるサポートを活用することをおすすめします。

専門家は、施設の衛生状況を調査し、改善点を見つけ出すことができます。また、適切な衛生管理方法を指導し、従業員への教育も行うことができます。
専門家のサポートを受けることで、食中毒リスクを大幅に減らすことができ、お客様に安全な食を提供することができます。

BMLフード・サイエンスでは、食品業界向けの総合衛生コンサルティングを行っています。食品の微生物・理化学検査、腸内細菌検査から飲食店の厨房衛生点検、食品工場監査、衛生管理・品質管理の仕組み作り、検査・システム構築支援までを総合的に提供しています。 飲食店を経営、運営されていて、食品衛生に関するお悩みをお持ちの方は、ぜひご相談ください。

お客様に安心を提供するために、今すぐ行動しましょう!

 

こちらのコラムは管理企画本部企画グループが担当いたしました。


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