廃棄物マニフェストとは、廃棄物が廃棄されたことを確認するための帳票です。
産業廃棄物には、建設業から排出される産業廃棄物と製造業から排出される産業廃棄物があり、ここでは、製造業から排出される産業廃棄物について解説していきます。
工場から排出された産業廃棄物が適切に処分されたことを確認するために、「廃棄物の処理及び清掃に関わる法律」に基づき、排出者はマニフェストを発行しなければなりません。
今回はその廃棄物マニフェストについてご紹介いたします。
1.廃棄物マニフェストっていったいなに?
マニフェストには、紙マニフェストと電子マニフェストがあり、どちらのマニフェストを使用してもかまいません。
https://www.zensanpairen.or.jp/disposal/manifest/
電子マニフェストは以下のサイトから無料体験もできます。
https://www.jwnet.or.jp/jwnet/manual/demo/index.html
マニフェストは公益社団法人 全国産業資源循環連合会から、所定の書式の物が販売されいますので、所定の書式の物を使用したほうが、記載方法の抜け漏れが無く法令違反にもなりづらいため、購入することをお勧めします。
https://www.zensanpairen.or.jp/disposal/manifest/purchase/
(1)廃棄物マニフェストの目的は?
廃棄物マニフェストは、高度経済成長に伴う不法投棄問題への対応として、1993年に一部産業廃棄物に対して義務化されました。廃棄物マニフェストを発行したとしても、廃棄物が適正に処分されるとは限りません。
2016年には廃棄物マニフェストを発行していたにもかかわらず、食品工場が産業廃棄物として排出した廃棄物が転売される事件が起きました。
マニフェストの発行だけに留まらず、マニフェスト内容の確認、産業廃棄物運搬業者、産業廃棄物処理業者への現地訪問、適切なコミュニケーションにより、産業廃棄物の適切な処分をより確実にすることができます。
(2)誰の対応が必要なの?
産業廃棄物の責任は、排出者にあります。
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廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)第3条第1項
事業者は、その事業活動に伴って生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならない。
また、同法第11条第1項において、事業者は、その産業廃棄物を自ら処理しなければならない。
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とあります。
産業廃棄物の処理を委託した場合でも、排出者に責任があることは変わりありません。
先ほどの、食品工場の廃棄物を転売されてしまった事件での刑事罰は、
廃棄物業者:懲役3年(執行猶予4年)
廃棄物転売業者:懲役2年6ヵ月(執行猶予3年)
排出事業者:行政指導(行政指導の対応として、産業廃棄物業者に対し、約2,000万円の訴訟)
本件では、処理業者がマニフェストの虚偽報告を行っていたことから、排出事業者には行政指導のみの対応となっています。
もし、産業廃棄物業者が排出事業者へ委託された廃棄物の処理困難通知を行っていた場合は、適切な措置義務違反となった可能性もあります。
https://www.hozenkousha.jp/_src/sc480/201701shiryo.pdf
(3)対象となる廃棄物は?
食品工場で発生するゴミは、有価物、産業廃棄物、一般廃棄物の3つがあります。
・有価物
廃棄する際に、処理費用が掛からず、逆にお金を受け取るものが有価物になります。
パン粉などが該当する場合が多いです。
・産業廃棄物
事業活動によって生じた廃棄物のうち特定の20種類(燃え殻、汚泥、廃油、廃酸、廃アルカリ、廃プラスチック類、ゴムくず、金属くず、ガラス・コンクリート・陶磁器くず、鉱さい、がれき類、ばいじん、紙くず、木くず、繊維くず、動物系固形不要物、動植物性残さ、動物のふん尿、動物の死体)のことを指し、それ以外のものを一般廃棄物とするとされています。(産業廃棄物と一般廃棄物の区分は自治体によって異なる場合があります)
食品工場の生産品目、特徴に応じて廃棄物の種類は様々でありますが、食品工場で対象となる産業廃棄物は、主に動植物性残さ、廃プラスチック類が多いです。
他にも排水処理施設を保有している食品工場では、汚泥が発生することもあります。また、フライヤーの油を廃棄物として処理している場合は、廃油が該当することもあります。
※特別管理産業廃棄物
産業廃棄物の中でも、「爆発性、毒性、感染性その他の人の健康又は生活環境に関わる被害を生ずる恐れがある性状を有する廃棄物」は特別管理産業廃棄物に該当します。
食品工場では、廃酸(pH2.0以下の廃酸)、廃アルカリ(pH12.5以上の廃アルカリ)が該当する可能性があります。
・一般廃棄物
産業廃棄物以外のものが一般廃棄物になります。
一般廃棄物の方が産業廃棄物よりも廃棄費用が安く済むからと言って、産業廃棄物を一般廃棄物として処理してしまうと法令違反になってしまいます。
2. 廃棄物マニフェストの運用方法
ここでは、紙マニフェストの運用方法について記載します。
紙の廃棄物マニフェストは複写用紙であり、7枚綴りとなっています。
それぞれの用紙を、排出事業者、産業廃棄物収集運搬業者、産業廃棄物処分業者(中間処分業者、最終処分業者)が保持します。また、産業廃棄物の運搬、処分が完了した際には、廃棄物処分に関連した業者へマニフェストを返却し、それぞれの業者で廃棄物が適切に処理されたことをマニフェストで確認します。紙マニフェストは、前年度1年間(前年度4月1日から当年3月31日)に交付したものすべてについて、排出事業者が管轄自治体へ報告する義務があります。マニフェストの報告は、排出事業者の本社所在地がある管轄自治体ではなく、排出した事業所がある管轄自治体になります。
毎年の報告を怠ると罰則が科される可能性があります。
(1)運用方法
産業廃棄物を排出した排出事業者が紙マニフェストを運用する方法を記載します。
紙マニフェストは、A、B1、B2、C1、C2、D、E票で構成されており、排出事業者が保管する必要のあるものは、A、B1、D、E票の4枚です。
これら4枚の帳票を、定められた期間保存することが必要です。
また、それぞれの票には返却期限が定められており、返却が遅い場合は産業廃棄物が適切に 処理されたことを確認するためにも取引業者へ帳票の返却を催促する必要があります。
紙マニフェストが多くある場合は、管理が煩雑になるため、パソコンの表計算ソフトを使用して管理することが多いです。
(2)保存期限
紙マニフェストの保存期限は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律でマニフェスト公布から5年間と定められております。
紙マニフェストの保管は毎年の報告義務もあるので、年度ごとにマニフェストをファイリングし、ファイルに5年間保管と明示しておくことで、間違えて紙マニフェストを廃棄してしまったという事態は防げます。
(3)返却期限
紙マニフェストの返却期限は、7枚のマニフェストそれぞれで異なります。
排出事業者に返却される紙マニフェストB2、D、E票について返却期限を下記に記載します。
①B2票
B2票は廃棄物の運搬終了後に、収集運搬業者から返却されます。
90日以内に運搬終了し、運搬終了した後、10日以内にマニフェストを返却される必要があります。
②D票
D票は廃棄物の中間処理完了後に、中間処理業者から返却されます。
B2票と同様90日以内に中間処理を終了し、終了後、10日以内にマニフェストを返却される必要があります。
③E票
E票は廃棄物の最終処分完了後に、最終処分業者から返却されます。
180日以内に最終処分終了し、最終処分終了した10日以内にマニフェストを返却される必要があります。
※最終処分の日付が間違っていることもありますので、E票が返却された際は記載されている日付を確認してください。
3.廃棄物マニフェストの構成
紙マニフェストは、A、B1、B2、C1、C2、D、E票で構成されており、排出事業者が保管する必要のあるものは、A、B2、D、E票の4枚です。
B1、C2票は、収集運搬業者が保管し、C1票は中間処理業者が保管します。
マニフェストでは、運搬受託者、処分受託者が契約書通りとなっているかを確認することができます。
A票
産業廃棄物を自社工場から産業廃棄物収集運搬業者に引き渡す際に、紙マニフェストを交付します。
収集運搬業者へ産業廃棄物を引き渡した証拠として、マニフェストのA票を控えとして、排出事業者が保管します。
B票
収集運搬業者が運搬完了した後に、マニフェストのB2票を排出事業者に返却します。返却されたB2票は排出事業者が保管します。
B1票は収集運搬業者が運搬完了の控えとして、保管します。
C票
中間処理業者が産業廃棄物の中間処理を終えた後に、C2票を収集運搬業者に返却します。返却されたC2票は収集運搬業者が保管します。
C1票は中間処理を終了した証拠の控えとして、中間処理業者が保管します。
D票
中間処理業者が産業廃棄物の中間処理を終えた後に、排出事業者に返却します。返却されたD票は排出事業者が保管します。
E票
最終処分業者が産業廃棄物の最終処理を終えた後に、排出事業者に返却します。中間処理を行わず、最終処分業者と中間処理業者が同じ場合は、D票、E票は同じ処分業者となります。返却されたE票は排出事業者が保管します。
4.電子マニフェスト制度
1998年から電子マニフェスト制度が始まりました。
紙マニフェストでは、毎年の管轄自治体への報告は産業廃棄物管理票交付等状況報告書を用いて報告しなければなりませんが、電子マニフェストは報告書無しで、届出を完了することができます。
また、電子マニフェストでは、マニフェストの保管は電子データで行うため、5年間の保管については管理する必要はありません。
運搬終了報告、処分終了報告、最終処分終了報告は、電子マニフェストで確認でき、期限が切れそうなマニフェストについては、アラートを設定することも可能です。
電子マニフェストを使用するには、収集運搬業者、中間処理業者、最終処分業者も電子マニフェストを使用する必要があります。
電子マニフェストを利用する際には、事前に収集運搬業者、中間処理業者、最終処分業者への確認が必要です。
また、電子マニフェストは、無料体験もできます。
https://www.jwnet.or.jp/jwnet/manual/demo/index.html
https://www.e-reverse.com/etc/demo/
5. 工場運営に関するコンサルティングサービス
BMLフード・サイエンスでは幅広い知識を持った、経験豊富な審査員がコンサルティングサービスを実施することが可能です。
組織様の現状を確認し、より良い工場運営を行うために、お手伝いできることがあると思いますので、お声がけください。
こちらのコラムは第三コンサルティング本部 総合Aグループ 小沼 光が担当いたしました。