企業では、労働安全衛生に関する法令や、企業の自主的な取組に基づいて、様々な安全衛生管理が行われています。皆様の職場においても労働安全衛生法令を遵守し、KY(危険予知)活動や5S 活動のような取組を日々実施していることと思います。そのようなゼロ災害を目指す取り組みにも関わらず労働災害は日々発生しています。本コラムでは安全衛生活動、安全衛生教育のポイントについてお話したいと思います。
1.労働災害の発生状況(令和5年)
(注)1 死亡災害報告より作成したもの。
2 新型コロナウイルス感染症のり患による労働災害を除いたもの。
引用:厚生労働省https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei11/rousai-hassei/
令和5年の労働災害発生状況を見ますと、死傷災害において転倒や動作の反動・無理な動作による件数は全体の40%以上を占めていますが、重大な死亡災害に繋がるものは少なく、墜落・転落やはさまれ・巻き込まれによる災害は死傷災害も死亡災害も多い傾向となっています。このような災害を無くすためにも安全衛生活動、安全衛生教育が重要となってきます。
2.安全衛生活動のポイント
(1)会社全体で取り組む
会社のトップをはじめとした経営層の皆様が、安全衛生管理の必要性を認識し、本気になって安全衛生活動に取り組むことが重要です。社長や工場長が現場に出向き、安全衛生活動を指導するなど、率先して行動することにより従業員の皆様にもその重要性が伝わります。従業員の安全への意識を高め、経営層、従業員、パートタイマー・派遣社員など、雇用形態に関わらずお互いに声を掛け合える職場、風通しのよい職場を作っていきましょう。
(2)安全衛生管理体制を整備する
労働安全衛生法では、会社(事業場)の従業員数に応じて、管理者等を選任することが定められています(安全管理者、衛生管理者、安全衛生推進者など)。また、安全委員会などの労使が協力しあう委員会等を設置することも定められています。人数規模によっては委員会という形式でなくても、従業員の意見を聴くための機会を設けることが必要です。安全衛生管理の担当者や推進者を決めたほうが活動を進めやすくなるため、あらかじめ担当者や推進者を決めて推進していきましょう。
なお、従業員の意見を聞き、安全衛生に対する取り組みに還元する目的が達成できるのであれば経営者が管理者や推進者になっても構いません。
(3)安全衛生管理のルール(規程)を構築する
安全衛生管理に関して、会社のルールとして、安全衛生管理規程を構築しましょう。規程というと難しく思うかもしれませんが、誰が、いつ、何を、何のために実施するのかを決めて、それを正しく実施するために文書にするものです。
厚生労働省のHPにも原案(https://jsite.mhlw.go.jp/ibaraki-roudoukyoku/content/contents/anzen_kanri_s1kitei_.pdf)が掲載されていますので、それを参考に、委員会等で検討し自社に合った内容へ修正しましょう。安全衛生教育についても、教育すべき事項、対象者、目的、内容、実施方法などを検討のうえ、規程に盛り込みましょう。
なお、安全衛生教育は、雇用形態に関わらず、すべての従業員に対して実施しなくてはなりません。
3.安全衛生教育の実施
(1)安全衛生教育とは
労働安全衛生法59条により、事業者は、労働者に対して安全衛生教育を行うことが義務付けられています。安全衛生教育は、主に6種類に分類でき、教育の実施が義務付けられているものが3種類、努力義務のものが3種類あります。義務の教育は必ず実施して、受講記録は保管しておくことが求められます。
【義務1】雇入れ時の教育、作業内容変更時の教育
労働安全衛生法第59条1項2項により、事業者は、労働者の雇入れ時や労働者の作業内容変更時に、労働者に対してその従事する業務に関する安全衛生教育を実施する義務があります。ただし、事務作業などが中心で該当する業務に従事しない労働者には、一部の教育を省略できます。(罰則あり)
【義務2】特別の危険有害業務従事者への教育(特別教育)
労働安全衛生法第59条3項により、事業者が労働者を一定の危険・有害な業務に就かせる際には、安全または衛生に関する特別の教育(特別教育)を実施する義務があります。ただし、すでに十分な知識・技能をもっていると認められる労働者については、特別教育を省略することができます。厚生労働省令で定める危険又は有害な業務は労働安全衛生規則第35条に定められています。(罰則あり)
【義務3】職長等に対する教育
労働安全衛生法第60条により、建設業や製造業(一部業種を除く)、電気業、ガス業、自動車整備業、機械修理業において、事業者は、新たに職務に就くことになった職長その他の作業中の労働者を直接指導または監督する者(作業主任者を除く)に対して、安全または衛生のための安全衛生教育を実施する義務があります。2023年4月1日の労働安全衛生法改正において職長教育の受講が必要な業種の範囲が拡大され、従来製造業の中でも対象外となっていた食品製造業、新聞業、出版業、製本業、及び印刷加工業の業種でも、新任の職長に対して職長教育を行うことが義務付けられました。職長教育の事項、実施時間は労働安全衛生規則第40条に定められています。
【努力義務1】安全管理者等への能力向上教育
労働安全衛生法第60条の2により、事業者は、安全衛生業務に従事する者の能力を維持・向上させるため、安全管理者等の管理者に対して、初任時教育、定期教育および随時教育を実施するように努める必要があります。
【努力義務2】危険・有害な業務に従事する者に対する安全衛生教育
労働安全衛生法第60条の2第2項により、事業者は、事業所における安全衛生の水準の向上を図るため、危険または有害な業務に現に就いている者に対して、安全衛生教育を実施するように努める必要があります。
【努力義務3】健康教育・健康保持促進措置
労働安全衛生法第69条により、事業者は、労働者に対して健康教育や健康保持増進を図る措置を継続的かつ計画的に実施するように努める必要があります。健康教育とは、労働者が健康に目を向けて、健康維持や増進に努められるよう、健康に関する教育や運動指導、メンタルヘルスケア、保健指導などをサポートするものです。
(2)安全衛生教育のポイント
安全衛生活動を行う上で、労働者の安全衛生に対する意識を向上させる必要があります。「安全衛生活動は重要なことであり、仕事を行う上で必要なこと」と認識してもらえるよう、管理者、従業員、パートタイマー・派遣社員など全員が一体となって取り組んでいきましょう。
また、労働者が安全で健康に働くためには、労働者の意見を分け隔てなく聴き、職場を改善していくことが必要です。正社員だけではなく、パートタイマー・派遣社員などの声に耳を傾けることも重要です。朝礼やミーティングなどにおける意見徴収や管理者等による面談のほか、改善活動などによる提案の実施も多くの会社で行われています。
安全衛生教育の実施に際しては、従業員の立場に立って具体的に教えることが大事です。重要なのは、従業員が教育の内容を理解し、正しく実践できることです。そのため従業員の理解度に沿って、簡単なことから徐々に難しい内容を教えていくようにしましょう。また、なぜそれをするのか、または、してはいけないのか、「理由」を説明しなければ、安全衛生管理の意識が向上せず、正しく行動することができません。
専門知識が必要となる教育を適宜効果的に実施することは非常に負担が大きくなります。必要に応じて外部機関の活用や、適した教材の活用などにより、教育実施部門、従業員双方にとって効率のよい教育を行っていきましょう。
4.基礎教育に最適な「LaKeel Online Media Service」とは
株式会社ラキールの提供する動画配信型教育サービス「LaKeel Online Media Service」は様々な業種・業態の企業に対して、従業員の安全衛生意識を高める教材として最適なサービスです。安全衛生に加え、食品衛生や一般教育動画を含め620本以上のコンテンツがあり、アニメーションによる動画でわかりやすく、お忙しい中でも短時間で視聴できることが大きな特長です。労働安全衛生教育でお困りであれば「LaKeel Online Media Service」をぜひご検討ください。
5.最後に
BMLフード・サイエンスでは、コンサルティングサービス/検査サービスの一環として、定期的に無料webセミナーを開催しておりますのでぜひご活用ください。
また、安全衛生に関する講習会や、オーダーメイド型教育コンテンツの作成なども行っています。
LaKeel Online Media Serviceについては販売代理店として、従業員教育にお困りの事業者様をしっかりサポートさせていただきますので、ぜひご相談ください。
【参考文献】
安全衛生関係リーフレット等一覧 |厚生労働省 (mhlw.go.jp)
こちらのコラムは管理企画本部 企画グループが担当いたしました。