1. TOP
  2. 最新記事
  3. コラム
  4. 夏に猛威を振るう細菌性の食中毒!実例と対策のポイント

夏に猛威を振るう細菌性の食中毒!実例と対策のポイント

夏に猛威を振るう細菌性の食中毒! 実例と対策のポイント

 気温が高く、湿度も高くなる夏は、食中毒菌が繁殖しやすい環境となり、毎年多くの食中毒が発生します。特に、夏は細菌性の食中毒のリスクが高まります。食中毒は、適切な対策を講じなければ、誰でも簡単に発症する可能性があります。
 本コラムでは、夏に多発する食中毒の種類と実例、発生しやすい要因、具体的な対策について解説します。

1.夏の食中毒の発生状況

厚生労働省の統計(食中毒発生状況)にて公開されている、令和5年 病因物質別月別食中毒発生状況によりますと、事件数は7月:80件、8月:65件となりました。ポイントとして、細菌性の食中毒の事件数は6月~8月にかけて増えており、月の食中毒総数のほぼ半数を占めます。


 

グラフ①

出典:厚生労働省「食中毒統計資料」を基に作成

細菌性食中毒は、1事件あたりの患者数が多いことが特徴となります。令和5年の患者数で各月の比較を行うと、細菌性の食中毒に関しては8月が突出しております。(8月全体の患者数のうち、95%が細菌性の食中毒となります。)




グラフ②

出典:厚生労働省「食中毒統計資料」を基に作成

 

 

2. 夏に細菌性の食中毒が多発する理由

夏の環境には、食中毒菌の繁殖を促進するいくつかの要因があります。

  • 気温が高い:食中毒菌は、気温が高いほど活発に増殖します。特に、25℃~40℃の間は菌の繁殖が盛んになり、食材が傷みやすくなります。特に、生鮮食品は傷みやすいので、適切な保存方法を心がける必要があります。
  • 湿度が高い:湿度が高い環境も、食中毒菌の繁殖を助長します。梅雨時期や台風シーズンなど、湿度が高い時期は特に注意が必要です。

 

 

3. 夏に多発する細菌性食中毒の種類と実例

(1) 黄色ブドウ球菌
  • 主な原因食品:にぎりめし、寿司、肉、卵、乳などの調理加工品及び菓子類など加熱後に手作業を行う食品が原因になることが多い。)
  • 症状:悪心、嘔吐、下痢など
  • 潜伏期間30分~6時間
  • 事例: 
    2024年5月:埼玉県内のスーパーが製造・配達したおにぎりを食べた従業員49人中、14人が嘔吐や下痢などの食中毒症状を訴えた。うち3人の便から黄色ブドウ球菌を検出した。
    2023年7月: 茨城県内のラーメン店で発生、食事をした7人が下痢や嘔吐などの食中毒症状を訴えた。原因食品は、発生の1日前に調理提供した食事。
    2023年9月: 岡山県内のイベントで発生、スタッフ関係者9人が食中毒。原因は自家製のおにぎりとみられている。

(2) サルモネラ
  • 主な原因食品:鶏肉、卵、牛、豚などの肉類、乳製品など
  • 症状:下痢、腹痛、発熱、脱水症状など
  • 潜伏期5時間~72時間(平均12時間)
  • 事例
    2024年6月: 福岡県福岡市の飲食店で発生、喫食者11名中8名発症 ※3名の便からサルモネラを検出 原因は低温調理のネギ塩タン(豚)、ミスジステーキ、ハンバーグ、串焼き(鶏もも、鶏⽪、砂ズリ、つくね)、他 
    2022年6月:千葉県の保育所で、給食を食べた園児86人と職員22人、計108人がサルモネラによる食中毒を発症した。
    2020年8月: 滋賀県内の飲食店で生卵の黄身をトッピングした「台湾まぜそば」を喫食した28人中19人が 食中毒症状を呈した。

 

(3) 腸管出血性大腸菌O157
  • 主な原因食品:牛肉、ハンバーグ、焼肉、サラダなど
  • 症状:下痢(血便あり)、腹痛、発熱、溶血性尿毒症症候群(HUS)など ※場合によっては死亡
  • 潜伏期間:3~8日
  • 事例: 
    2023年8月: 兵庫県内の焼肉店でで食事をした9人が下痢などの症状を訴え、検査の結果、腸管出血性大腸菌O157に感染していることが判明(症状軽微)
    2017年8月:埼玉、群馬両県の系列総菜店で購入したポテトサラダなどを食べた人が腸管出血性大腸菌O157に感染した集団食中毒が発生(患者数23人(死亡1人))
    2014年7月: 静岡市の花火大会の露店で販売された冷やしきゅうりを食べた複数の人が、腸管出血性大腸菌O157による食中毒を発症(患者数510人(入院患者114人))

(4) カンピロバクター
  • 主な原因食品:鶏肉:特にレバーや砂肝などの内臓、食肉の生食や加熱不十分な状態のもの等
  • 症状下痢、腹痛、発熱、悪心、 嘔吐、頭痛、悪寒、倦怠感など ※また、カンピロバクターに感染した数週間後に、手足の麻痺や顔面神経麻痺、呼吸困難などを起こす「ギラン・バレー症候群」を発症する場合があることが指摘されています。
  • 潜伏期間27日間
  • 事例
    2024年6月: 岐阜県の飲食店にて喫食した5名がカンピロバクターによる食中毒を発症。原因は、鶏ユッケ、鶏水炊き、刺し身など。 
    2024年6月:鳥取県の焼き鳥屋にて食事をした3名が発熱、腹痛、下痢等を訴える。患者らの便からカンピロバクターが検出された。
    2023年8月:石川県の飲食店にて、流しそうめんの集団食中毒が発生。原因は、流しそうめんに使用していた湧き水に含まれていたカンピロバクターによるもの。患者数が892人に上ると石川県より発表。

(5) 腸炎ビブリオ
  • 主な原因食品魚介類の刺身やすし類等
  • 症状激しい腹痛、下痢、発熱、嘔吐
  • 潜伏期間8時間~24時間(短い場合で2、3時間)
  • 事例
    2023年8月: 広島県の旅館で発生した、腸炎ビブリオ食中毒。患者数は旅館で宿泊・食事をした3グループ8人。旅館で提供された海産物が原因とみている。
    2018年8月~9月: 関東圏で発生した、複数店舗の寿司店による腸炎ビブリオ食中毒。原因は、生ウニだと考えられている。
    1999年8月: 山形県内に複数店舗を持つスーパーで発生。生寿司を食べた600名以上が、下痢、腹痛、嘔吐等の食中毒症状を呈する。

上記以外にも、毎年多くの食中毒が発生しています。 食中毒は、適切な対策を講じなければ、誰もが簡単に発症する可能性があります。



4.食中毒を防ぐための対策3つのポイント

(1)つけない  
 
①食材の管理
  • 原材料の購入、受け入れ時にはそれらが適切な温度、状態で納品されていることを確認し、速やかに適した保管場所に保存する。
  • 生の肉類や魚介類は他の食材を汚染することが無いよう、区別して保管する。
②調理器具の管理
  • 調理器具は洗浄消毒がしやすい材質のものを採用する。
  • まな板や包丁は肉魚用や野菜用など、食材ごとに用意して使い分ける。
  • 調理器具は使用後すぐに洗い、消毒を行いよく乾燥させる。
③従業員の衛生
  • 従業員向けの手洗手順を定め、調理中は手指を清潔に保ち、調理の前後には石鹸を用いて決められた手順で手をよく洗い、手洗後は消毒を行う。
  • 従業員に対し定期的な健康診断、検便検査を受けさせ、食中毒菌を保菌している可能性がある従業員を調理に従事させない。
  • 従業員向けの服装や身だしなみをルール化し、適切な頻度で洗濯された清潔な制服を身に付け、髪を束ね、爪を短く切らせる。指輪などの装飾品は調理中は外させる。

害虫・害獣対策

  • 厨房内を清潔に保ち、害虫や害獣の侵入口となる隙間を塞ぎを防ぐ。
  • ゴミの置き場を、調理中の食材を汚染しない場所に定め、適切な頻度でゴミ出しし、長期保管によって害虫・害獣が誘引されることを防止する。
  • ゴミの保管容器は蓋ができる形状のものを選択し、使用しない間は蓋をして害虫・害獣の誘引を防ぐ。

 

(2)ふやさない  
 
①食材の管理
  • 食材毎の適切な温度帯に保管が可能な場所に保管する。要冷蔵や要冷凍の食材の常温保管は避ける。
  • 食材は新鮮なものを使用し、賞味期限・消費期限を厳守する。
  • 食材の解凍時は流水解凍や冷蔵解凍を行い、食中毒菌が繁殖しやすい温度帯になり得る溜め水解凍や常温解凍は避ける。
②保管機器の管理
  • 冷凍庫や冷蔵庫は冷気が全体にまわるよう、庫内にものを詰め込み過ぎないようにする。
  • 冷凍庫や冷蔵庫の温度が適切な状態に保たれているか定期的に確認を行い、温度が適切でない場合はその保管機器を使用しない。

(3)やっつける

 
①加熱殺菌
  • 生肉や生魚介類は十分に加熱する。特に、食肉は中心温度が75℃1分相当の加熱をする。
  • ノロウイルスが心配される食材を取り扱う場合は85℃~90℃で90秒以上加熱する。
②その他の殺菌
  • 加熱しないで提供する食材を提供する場合は、それぞれの食材に適した殺菌を施して提供する。生野菜を提供する場合はよく表面を洗浄した上で必要に応じて次亜塩素酸ナトリウム溶液などをもちいて殺菌をおこなう。

 

BMLフード・サイエンスでは、「個人衛生管理について」を公開しております。こちらもぜひご参照ください。

「個人衛生管理について」ダウンロードフォーム

https://www.bfss.co.jp/use_fuldownload/personal_hygiene.html

 

食中毒防止には従業員一人ひとりの協力が不可欠です。従業員向けに必要な食品衛生教育についてはこちら(https://om.lakeel.com/column/detail04/

 

5.最後に

食中毒対策は、日々の積み重ねが重要です。 しかし、自社だけで全てを完璧に行うのは難しい場合があります。そこで、衛生管理の専門家によるサポートを活用することをおすすめします。

専門家は、施設の衛生状況を調査し、改善点を見つけ出すことができます。また、適切な衛生管理方法を指導し、従業員への教育も行うことができます。

専門家のサポートを受けることで、食中毒リスクを大幅に減らすことができ、お客様に安全な食を提供することができます。

BMLフード・サイエンスでは、食品業界向けの総合衛生コンサルティングを行っています。食品の微生物・理化学検査、腸内細菌検査から飲食店の厨房衛生点検、食品工場監査、衛生管理・品質管理の仕組み作り、検査・システム構築支援までを総合的に提供しています。 飲食店を経営、運営されていて、食品衛生に関するお悩みをお持ちの方は、ぜひご相談ください。

お客様に安心を提供するために、今すぐ行動しましょう!

 

参考情報:



こちらのコラムは管理企画本部企画グループが担当いたしました。


BMLフード・サイエンス飲食店アレルギー対策

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

コンサルティング、認証取得支援・適合証明、検査サービスに関するご相談は、お気軽にお問い合わせください。

資料ダウンロード

お役立ち資料ダウンロード

食品衛生および品質管理に関するトピックを紹介するお役立ち資料を提供しています。

依頼・お問い合わせ

当社サービスに関する依頼・お問い合わせ

コンサルティング、認証取得支援・適合証明、検査サービスに関する幅広いご相談を承ります。

セミナーバナー