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猛暑日が続いた2024年夏!今夏起きた食中毒事故と予防対策

猛暑日が続いた2024年夏!今夏起きた食中毒事故と予防対策

 2024年夏は連日記録的な猛暑日となり、飲食店や家庭において食品の管理に苦慮する場面も多く、様々な食中毒ニュースが取り沙汰されていました。

 本コラムでは近年の細菌による食中毒発生状況から、2024年夏に起きた細菌による食中毒を振り返ります。発生事例を把握することで、皆さんの衛生管理意識が高まり、食中毒防止につながると幸いです。

1.細菌による食中毒の発生状況

厚生労働省の食中毒統計資料にて公開されている、令和元年(2019年)~令和5年(2023年)食中毒発生状況を基に過去5年間の細菌による食中毒発生件数(5年間平均)を確認したところ、最も多かった病因物質はカンピロバクターでした。続いてウエルシュ菌、サルモネラ属菌、ぶどう球菌となっていました。



※左右にフリックしてご覧いただけます。
病因物質

年間発生件数

(2019~2023年
5年間平均)

患者数

(2019~2023年
5年間平均)

食中毒1件あたりの患者数

(2019~2023年
5年間平均)

カンピロバクター 
ジェジュニ/コリ
203.6 1302.6 6.4
ウエルシュ菌 25.0 1386.8 55.5
サルモネラ属菌 21.8 601.6 27.6
ぶどう球菌 19.4 285.4 14.7
腸管出血性大腸菌(VT産生) 12.2 116 9.5
その他の病原大腸菌 4.6 1846.2 401.3
その他合計 4.8 72.4 15.1

 

ウエルシュ菌は、少量の菌数で発症するカンピロバクターとは異なり、発症には一定量の菌数が必要なため、食中毒が発生する場合には食品全体が汚染されていることが多く、また原因食がカレーやシチュー等の煮込み料理であることも重なって、発生件数に対して患者数が多いことが特徴です。

 

次に、病因物質別発生件数を月別(2019年~2023年平均)に見てみたところ、年間通して細菌による食中毒は発生していますが、6月~9月にかけて増加傾向にあることが分かります。気温が上がり、細菌にとって好環境になる春~秋は特に気を付けていく必要があります。

 

 

                                   グラフ① 病因物質別 年間食中毒発生件数 (2019年~2023年平均)

出典:厚生労働省「令和元年(2019年)~令和5年(2023年)食中毒発生状況」を基に作成





2. 2024年夏の細菌による食中毒情報と予防対策

 実際に2024年の6月~8月に起きた細菌性食中毒ニュースについて、当社メルマガ「食中毒ニュース」から抜粋しました。主な原因食品や症状、潜伏期間も合わせて確認していきます。

(1)カンピロバクター食中毒事例

 

 

■特徴:大気中では生きられないカンピロバクターは、ニワトリ、ウシ等の家禽や家畜、ペット、野鳥、野生動物など多くの動物の腸管内に生息しています。特にニワトリは保有率が高く、市販されている鶏肉の60%以上が汚染されていると言われています。

■主な原因食品:鶏肉:特にレバーや砂肝などの内臓、食肉の生食や加熱不十分な状態のもの等

■症状:下痢、腹痛、発熱、悪心、 嘔吐、頭痛、悪寒、倦怠感など 

稀にギランバレー症候群という自己免疫性末梢神経疾患(手指や四肢の痺れ、震えなど)を発症することがある   

■潜伏期間:1~7日

■具体的な予防対策

1.しっかりと食材に火を通すこと
  (カンピロバクターは熱に弱いため、中心温度75℃ 1分以上の加熱で死滅します)。

2.肉用の調理器具と別の食材で使用する調理器具を分けること。

3.肉を取り扱った後は手指や調理器具を洗うこと。

また個人や家庭で出来る予防対策としては、上記3つに加えて加熱不十分と思われる鶏肉は喫食しないことが挙げられます。

 
参考資料:カンピロバクター食中毒予防について(Q&A)|厚生労働省 (mhlw.go.jp) 


当社コラムにおいても詳しくカンピロバクター食中毒について解説してますので、こちらもご覧ください。

 

カンピロバクター


関連コラム:カンピロバクター食中毒とは?~予防対策・抑えるべき3つのポイント~

カンピロバクターの特徴と食中毒予防対策のポイントを紹介しています。


 


(2)ウエルシュ菌食中毒事例

 




■特徴:ウエルシュ菌は、ヒトや動物の腸管、土壌など自然界に広く存在しています。 酸素を好まず、熱に強い芽胞をつくるため高温でも死滅せず生き残ります。

■主な原因食品:カレーやシチュー等の食肉、魚介類及び野菜類を使用した煮込み料理で、一度に大量に調理する食品で発生が多くみられます

■症状:主に腹痛と下痢 (発熱や嘔吐はほとんどみられません。)
※ほとんどの場合、発症後 1~2 日で回復するとされていますが、基礎疾患のある患者、特に子供や高齢者ではまれに重症化することが知られています。

■潜伏期間:6~18 時間(平均 10 時間)

■具体的な予防対策

1.前日調理は避け、加熱調理したものはなるべく早く食べること。

2.特に大量に作った料理を、長時間常温で保管しないこと。(本菌は広範囲の温度域(12~50℃・至適温度:43~45℃)で増殖します)

3.やむを得ず食品を保管するときは、小分けにする等して急速に冷却し、冷蔵もしくは冷凍で保管すること。

4.温めなおすときは、かき混ぜながら食品の中心部まで火を通すこと。(75℃以上)

 

参考資料: 

ウェルシュ菌:農林水産省 (maff.go.jp)

「ウエルシュ菌食中毒注意報」を全県に発出しました。/長野県 (nagano.lg.jp)

細菌による食中毒 |厚生労働省 (mhlw.go.jp)

factsheets_clostridiumperfringens.pdf (fsc.go.jp)

 


(3)サルモネラ属菌食中毒事例

 





■特徴:鶏・豚・牛といった動物の腸管や、河川、湖、下水道などに広く生息しています。乾燥に強く環境中での生存率が高いため、 食品取扱施設等では二次汚染が起こりやすいという傾向があります。

■主な原因食品:卵やその加工品、食肉、うなぎ、すっぽん、いか乾製品などさまざまな食品。また、サルモネラ属菌を保菌した人や調理器具を介して、二次汚染が発生するケースもある。

■症状:激しい腹痛や下痢、発熱、嘔吐など

■潜伏期間:半日~2日程度

■具体的な予防対策

1. 肉・卵は75℃以上で1分以上、十分に加熱し、卵の生食をする際は賞味期限内の卵のみとすること。

2. 食品を冷蔵庫や冷凍庫で保管すること。

3. 調理する際は、しっかり手洗いをし、調理器具はよく洗浄し、熱湯などで消毒すること。

4.動物を介して食品を汚染する場合もあるため、日頃からネズミやゴキブリなどを発生させないように心がけること。

 

参考資料:広報誌「厚生労働」|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

genussalmonella.pdf (fsc.go.jp)p11


 

 
(4)ぶどう球菌食中毒事例



■特徴:黄色ブドウ球菌は自然界に広く分布しており、人の口腔内や手指にも存在します。また、化膿菌の一つとしても知られており、化膿巣には本菌が多量に存在しています。調理する人の手や指に傷があったり、その傷口が化膿している場合、そこから食品が汚染されることもあります。食品中で菌が増えると熱に強い毒素(エンテロトキシン)を産生し、再度加熱をした食品からでも食中毒が発生する場合があります。

■主な原因食品:にぎりめし、寿司、肉、卵、乳などの調理加工品及び菓子類など(加熱後に手作業を行う食品が原因になることが多い。)

■症状:吐き気、嘔吐、下痢、腹痛

■潜伏期間:30分~6時間(平均3時間)

■具体的な予防対策

1.菌が食品に付かないよう調理前の手洗いや調理器具の洗浄・殺菌を心がけること。

2.手や指に傷などがある人は、手袋をするなど食品に直接触れないようにすること。

3.食品は10℃以下で保存し、菌が増えるのを防ぐこと。

 

上記以外にも、多くの食中毒が発生しました。 食中毒は、適切な対策を講じなければ、誰もが簡単に発生させてしまう可能性があります。最新情報は当社のメルマガをご参照ください。

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3. 冬に向けて気を付けたい食中毒

これから冬を迎えるにあたり特に気を付けたい食中毒は、ノロウイルス食中毒です。発生施設の多くは飲食店(仕出し含む)であり、寿司や刺し身、弁当、サラダなどの手作業の多い調理品が主な原因食品となっています

細菌性食中毒の予防3原則(菌をつけない、増やさない、やっつける)に対して、ノロウイルス食中毒予防としては、一般的に食品中でウイルスは増殖しないことから、

1.持ち込まない、2.拡げない、3.つけない、4.やっつける(85~90℃,90秒間以上)

の4原則が重要となってきます。

詳しくはこちらのコラムをご覧ください。

  

ノロウィルス


関連コラム:現代において撲滅が困難な食中毒・感染症 ―ノロウイルスの特徴と食中毒対策―

ノロウイルスの特徴や、食中毒事例、対策をまとめています。

 

またBMLフード・サイエンスでは、「ノロウイルス食中毒」に関するお役立ち資料を公開しております。こちらもぜひご参照ください。

「ノロウィルス食中毒」ダウンロードフォーム|BMLフード・サイエンス-検査・品質管理の総合コンサルティング (bfss.co.jp)



4.最後に

目に見えない細菌やウイルスは、ちょっとした不注意や大丈夫だろうという油断などで知らず知らずに増殖し、毎年多くの食中毒事故につながっています。ご自身の扱う食品や作業工程の特徴を把握し、食中毒対策を心がける必要があります。

しかし、自社だけで全てを完璧に行うことは難しい場合があります。そこで、衛生管理の専門家によるサポートを活用することをおすすめします。

専門家は、施設の衛生状況を調査し、改善点を見つけ出すことができます。また、適切な衛生管理方法を指導し、従業員への教育も行うことができます。

専門家のサポートを受けることで、食中毒リスクを大幅に減らすことができ、お客様に安全な食を提供することができます。

BMLフード・サイエンスでは、食品業界向けの総合衛生コンサルティングを行っています。食品の微生物・理化学検査、腸内細菌検査から飲食店の厨房衛生点検、食品工場監査、衛生管理・品質管理の仕組み作り、検査・システム構築支援までを総合的に提供しています。 飲食店を経営、運営されていて、食品衛生に関するお悩みをお持ちの方は、ぜひご相談ください。

 

BMLフード・サイエンスでは、「個人衛生管理について」を公開しております。こちらもぜひご参照ください。

「個人衛生管理について」ダウンロードフォーム

 

食中毒防止には従業員一人ひとりの協力が不可欠です。従業員向けに必要な食品衛生教育についてはこちら



こちらのコラムは管理企画本部企画グループが担当いたしました。


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