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ノロウイルスに対して有効な消毒(不活性化)とは

ノロウイルスに対して有効な消毒(不活性化)とは

 ノロウイルス感染症は、ノロウイルスによって引き起こされる、下痢・嘔吐などの胃腸障害を主とする、子どもから大人までかかる感染症です。ノロウイルス感染症は年間を通じて発生しますが、冬場に特に多く発生しています。

 ノロウイルスによる症状は、非血性下痢、嘔吐、胃痛が特徴であり、発熱や頭痛も発生する可能性があります。感染力が非常に強く、少量のウイルスでも感染・発症します。ノロウイルスによる食中毒は、ノロウイルスに汚染された二枚貝などの食品を食べることによって発症しますが、感染者の便や嘔吐物に触れた手指で取り扱われた食品などを介して、二次感染を起こすことが多くなっています。

 感染を広げないためには、正しい知識と対策が重要となります。


1.ノロウイルスの科学的特性

 ノロウイルスは直径約30~40nmの球形で、カップ状のたん白質の中に遺伝子が包まれた構造をしています。インフルエンザウイルスなどは、アルコールに弱い脂質性の膜であるエンベロープをもつエンベロープウイルスに分類されますが、ノロウイルスはエンベロープを持たないノンエンベロープウイルスに分類され、ある意味ウイルス遺伝子がむき出しの状態となっています。そのため、アルコールだけでなく、一般的な消毒液ではダメージを与えにくいウイルスです。また、乾燥、酸などへの抵抗性も強く、乾燥状態や液体の中でも長期間安定し、凍結に対する耐性もあるウイルスです。

2. 有効な消毒手法

 ノロウイルスを失活化させる方法としては、次亜塩素酸ナトリウムや加熱による方法が挙げられます。また、手洗いによる洗浄も有効的です。

 

手法1:次亜塩素酸ナトリウム溶液による消毒

 次亜塩素酸ナトリウム溶液は、1000ppm(塩素濃度約0.1%)で1分間、200ppm(塩素濃度約0.02%)で5分間程度浸すことによって、ノロウイルスを失活化出来ます。
 まな板、包丁、へら、食器、ふきん、タオル等の調理器具等は、洗剤などを使用し十分に洗浄した後、次亜塩素酸ナトリウム(塩素濃度約200ppm)で浸すように拭くことでウイルスを失活化させることが出来ます。

 

手法2:有効なアルコールによる消毒

 ノロウイルスは、一般的なアルコール手指消毒剤が効きにくい、ノンエンベロープウイルスに分類されています。しかし、近年ではノンエンベロープウイルスにも有効な酸性アルコール手指消毒剤が開発されています。厚生労働省が発行する「大量調理施設衛生管理マニュアル(2016年7月1日の改正5)」により、ウイルスに有効なエタノール製剤の使用に関する留意点が追加され、“エタノール系消毒剤には、ノロウイルスに対する不活化効果を期待できるものがある。使用する場合、濃度・方法等、製品の指示を守って使用すること。”と明記されました。ノロウイルスへの効果を期待する場合には明確なエビデンスのあるアルコール手指消毒剤をご使用ください。

 

手法3:加熱による消毒

 ノロウイルスは、低温や乾燥には強いですが、高温や高湿度では感染力が弱まります。食品や調理器具を85℃~90℃で90秒以上加熱することで、ノロウイルスを失活化させることが出来ます。特に、抵抗力の弱い方は、加熱が必要な食品は中心部までしっかり加熱して食べることをお勧めします。



3.対象物ごとの消毒ポイント

 

ケース1:調理器具・調理台やドアノブなどの環境

 調理器具等は洗剤などを使用し十分に洗浄した後、次亜塩素酸ナトリウム(塩素濃度約200 ppm)で浸すように拭くことでウイルスを失活化できます。また、85℃以上の熱湯で1分以上の加熱が有効です。なお、二枚貝などを取り扱うときは、専用の調理器具(まな板、包丁等)を使用するか、調理器具を使用の度に洗浄・消毒する等の対策により、他の食材への二次汚染を防止するよう、特に注意することが必要です。
 次亜塩素酸ナトリウムは金属腐食性があるため、ドアノブなどの金属部の消毒後は十分に薬剤を拭き取ることが必要となります。

ケース2:手など人体の消毒

 手洗いは、 手指に付着しているノロウイルスを物理的に減らす最も有効な方法です。 常に爪を短く切って、指輪等の装飾品をはずし、石けんを十分泡立て、手指を洗浄します。 すすぎは温水による流水で十分に行い、清潔なペーパータオルで水分をしっかりと拭き取ります。石けん自体にはノロウイルスを直接失活化する効果はありませんが、手の脂肪等の汚れを落とすことにより、ウイルスを手指から剥がれやすくする効果があります。
 消毒用アルコールによる手指消毒は、石けんと流水を用いた手洗いの代用にはなりません。あくまで、一般的な感染症対策の観点から手洗いの補助として用いてください。

 

ケース3:衣類・リネン類

 衣類・リネン類は、まず洗剤を入れた水の中で静かにもみ洗いします。その際にしぶきを吸い込まないよう注意が必要です。下洗いした後の消毒は85℃で1分間以上の熱水洗濯が適しています。ただし、熱水洗濯が行えない場合には、次亜塩素酸ナトリウムによる消毒が有効となります。具体的な方法としては、次亜塩素酸ナトリウム(0.05~0.1%)に30分間浸漬します。その際も十分にすすぎ、高温の乾燥機などを使用すると殺菌効果は高まります。



4.消毒作業時・作業後の注意

 消毒作業時は大きく窓を開けるなどして十分に換気し、換気設備がある場合には必ず運転させてください。嘔吐物や糞便を片付けるときは、ゴーグル、使い捨て手袋、マスク、エプロンなどを着用してください。ウイルスが飛び散らないように、嘔吐物、糞便をペーパータオル等で静かに拭き取り、拭き取った後は、次亜塩素酸ナトリウム(塩素濃度約200 ppm)で浸すように床を拭き取り、その後水拭きをします。使用済み手袋やマスクは、ビニール袋などで密閉して捨てます。この際、ビニール袋に廃棄物が充分に浸る量の次亜塩素酸ナトリウム(塩素濃度約1,000 ppm)を入れることが望まれます。
 処理が終わったら必ず手洗いを実施してください。ノロウイルスは乾燥すると容易に空中に漂い、これが口に入って感染することがあるので、嘔吐物、糞便は乾燥しないうちに床等に残らないよう速やかに処理し、処理した後はウイルスが屋外に出て行くよう空気の流れに注意しながら十分に喚気を行うことが、感染防止対策にとって重要です。



5. いつでも消毒対応できるために必要な準備

 ノロウイルスは、感染者の嘔吐物や糞便を介して感染・拡大する可能性が大いにあるため、嘔吐物や糞便を処理する際は、処理する人自身への感染と、施設内への汚染拡大を防ぐ必要があります。迅速かつ安全に消毒を行うために、処理キットを準備しておきましょう。処理キットの中身は、ゴーグル、使い捨て手袋、マスク、使い捨てエプロン、拭き取るための布やペーパータオル、ビニール袋、次亜塩素酸ナトリウム、専用バケツ、などです。
 適切な処理方法で、迅速、確実に消毒を行うことが必要です。



6.おわりに

 ノロウイルスに感染したにも関わらず、特に症状が認められない状態のことを、不顕性感染といいます。自覚症状がないまま糞便中にウイルスを排出することがあり、感染拡大のリスクがあります。身近な人に症状がある場合は感染している可能性が高いため、食品取扱従事者は特に注意が必要となります。自らが不顕性感染である可能性を自覚した行動が必要となります。また、スクリーニング検査を定期的に実施し、保菌者を発見することも感染拡大防止のために重要となります。
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こちらのコラムは第一コンサルティング本部 東京Dグループ 朝比奈さやかが担当いたしました。


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