レジオネラ属菌とは、水道水や空調設備などの水に生息する細菌の一種です。この細菌に感染すると、高熱や呼吸困難などの症状を引き起こすレジオネラ症という病気になる可能性があります。レジオネラ症は重症化すると死亡する危険もあり、感染を防ぐには、水質管理や検査が大切です。
このコラムでは、レジオネラ属菌とレジオネラ症について説明します。
1.レジオネラ属菌について
レジオネラ属菌とは、自然界(河川、湖水、温泉や土壌など)に生息している細菌で、感染するとレジオネラ症を引き起こします。一般に20℃から50℃で繁殖し、36℃前後が最も繁殖に適した温度といわれています。入れ替わりの少ない水、消毒されていない水、維持管理が適正に行われていない水などにおいて、レジオネラ属菌が入り込んだ時に増殖するおそれがあると言われています。現在までにおよそ60種類が知られており、その中でも、レジオネラ・ニューモフィラは、レジオネラ肺炎を引き起こす代表的なレジオネラ属菌の1種とされています。
2.レジオネラ属菌感染経路
レジオネラ属菌感染経路として、水が循環又は停滞して微生物が増殖しやすい環境にレジオネラ属菌が入り込むと、増殖が進み急激に菌数が増えることがあります。
レジオネラ属菌に汚染されたエアロゾル(細かい霧やしぶき)を吸入、汚染水の吸引、誤嚥、経口感染することによって、細菌が感染してレジオネラ症を発症することがあります。レジオネラ属菌は風邪などのようにヒトからヒトへ感染することはありません。これまでに、給水・給湯設備、加湿器、冷却塔水、循環式浴槽、シャワー、ホテルのロビーの噴水、水景施設などでレジオネラ属菌が見つかっています。
3.レジオネラ属菌の感染リスク
重症化に繋がるレジオネラ肺炎は健常者も罹患しますが、高齢者や新生児は肺炎を起こす危険性が通常より高く、また大酒家、喫煙者、透析患者、免疫機能が低下している人は、レジオネラ肺炎に罹りやすい傾向がありますので、適切な感染防止対策が必要となります。
4.レジオネラ症について
レジオネラ症とは、レジオネラ・ニューモフィラを代表とするレジオネラ属菌の感染によりおこる細菌感染症です。レジオネラ症は感染症法で四類感染症に指定されています。
(1)レジオネラ症はどのような症状になりますか?
レジオネラ症の主な病型としては、重症のレジオネラ肺炎と軽症のポンティアック熱が知られています。
レジオネラ肺炎
症状:レジオネラ肺炎は、全身倦怠感、頭痛、食欲不振、などの症状に始まり、高熱、寒気、胸痛、呼吸困難が見られるようになります。また、意識レベルの低下などの中枢神経系の症状や、下痢などがレジオネラ肺炎の特徴とされています。軽症例もありますが適切な治療がなされなかった場合には急速に症状が進行することがあり、命にかかわることもあります。
潜伏期間 : 2日~10日
ポンティアック熱
症状 :突然の発熱、悪寒、筋肉痛などの症状がみられますが、またそれらは一過性のもので、自然に治癒します。
潜伏期間 : 1日~2日
(2)レジオネラ症発症状況
2011年第1週~2021年第35週に報告された症例を集計した(2021年11月4日時点)国立感染症研究所の報告によると以下の傾向がみられます。
月別報告数:1年中みられますが、特に7月・9月・10月に多く、冬に少ないという季節性がみられます。
年間報告数:2011~2019年にかけて経年的に増加がみられ、新型コロナウイルス感染症流行が始まった2020年は2019年の約90%に減少しました。要因として新型コロナウイルス感染症の流行以降、マスク着用の頻度が増えたこと、3つの密を避ける感染対策がされたこと、温泉等の入浴施設利用が減ったことにより、レジオネラ症患者が微減した可能性があります。
年齢分布:性別で異なりますが、男女ともに高齢になるほど増加がみられます。
病型:肺炎型94.8%、ポンティアック型4.3%、無症状病原体保有者0.8%であり、肺炎型が大半を占めています。
症状:発熱、咳嗽、呼吸困難、下痢、腹痛、届出時多臓器不全
届出時死亡:229例あり、65歳以上が40~64歳より多くなっています。
感染原因・感染経路(確定・推定):水系感染が5,465例(全報告に占める割合:32.5%)、塵埃感染が953例(5.7%)報告されています(重複あり)。
※レジオネラ症は温泉への入浴や旅行と関連してみられることがあります。
感染性エアロゾルを発生しうる環境要因の分析を進め、対応・対策を強化していくことが重要と考えられます。
5.レジオネラ属菌の感染を防ぐためには
レジオネラ属菌の感染を防ぐためには、「菌を増やさない」「生物膜(ぬめり)をつけない」「エアロゾルを吸い込ませない」ことが重要です。
- 外部からのレジオネラ属菌の侵入防止を行い、微生物や藻類の繁殖に好適な環境をつくらないこと。
- 清掃・殺菌・温度管理の徹底等を行い、レジオネラ属菌の除去及び繁殖しやすい状況をできるだけなくすこと。
などが挙げられており、これらによってレジオネラ属菌を含むエアロゾルの飛散を抑制する措置が必要です。
また、衛生管理を計画的かつ確実に進めるにあたって、マニュアルやチェックシートを作成し、従業員に周知徹底を行い管理することが重要です。
レジオネラ属菌検査の必要性
公衆浴場における水質基準等に関する指針には、レジオネラ属菌検査について以下のように示されています。
水質基準
レジオネラ属菌は、10CFU/100mL未満(不検出)であること。
検査頻度
浴槽水等の水質検査は、循環式浴槽の形態によって以下のとおり、定期的に行うこととされ、その結果は検査の日から3年間保管することとなっています。
- 毎日完全換水型:1年に1回以上
- 連日使用型:1年に2回以上(浴槽水の消毒が塩素消毒でない場合、1年に4回以上)
- 日常での衛生管理等を行わずに事故を起こした場合には、営業停止処分や罰則等の責任を問われる恐れがあることを理解した上で、日常の衛生管理が適切に行われているかを確認するためにも、検査を行うということが必要です。
6.厨房の衛生管理で気を付けること
厨房で使用する給湯水等についても、レジオネラ属菌等による水の汚染に伴う健康影響を防止する観点から、その水が人の飲用、炊事用、浴用その他、人の生活に供する場合には、水道水質基準に適合する水を供給することとされており、給湯設備についても貯湯槽の点検、清掃等適切な維持管理を実施することが必要です。*(厚労省の建築物環境衛生管理基準を引用)
お客様に余暇や娯楽の時間を過ごせる場を提供する施設やサービス業界では、安心してサービス受けてもらうためにも、厨房や温泉施設等の清掃・消毒や温度管理などを徹底し、また従業員への衛生管理への周知徹底を行うことが大切です。定期的にレジオネラ検査や衛生点検を行い、レジオネラ症をおこさないようにつとめましょう。
(参考HP)
厚生労働省HP レジオネラ症:https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_00393.html
東京都福祉保健局
公衆浴場・旅館業・プール施設管理者のためのレジオネラ症防止自主管理マニュアル (PDF):
https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/kankyo/eisei/yomimono/yokujyou_ryokan.files/legimanual1.pdf
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