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ガラス製食器の品質管理のポイント ~安全に食器を販売するためには?~

ガラス製食器の品質管理のポイント ~安全に食器を販売するためには?~

 ガラス製食器にどのようなイメージを抱かれますか?

「透明性がありキレイ」「ニオイ移りしにくく、衛生的」「高級感がある」等の良いイメージがある反面で、「熱や衝撃に弱く割れやすい」「割れた場合に危険である」といった取り扱いにくい印象もあると思います。

ガラス製食器の品質不良は、時に重大事故や大規模な製品回収につながる場合もあります。

 本コラムでは、ガラス製食器を販売する方に向けて、ガラスの特性や事故事例、品質管理上のポイントについてお話します。

1.ガラスの種類と特性

 ほとんどのガラスは、その組成から3つのグループに分けることができます。
ソーダガラス、鉛ガラス(クリスタルガラス)、ほうけい酸ガラスです。
すべて、主成分として二酸化けい素が使用されています。



ほうけい酸ガラスは一般的に「耐熱ガラス」と呼ばれています。
通常のガラスは温度変化が加わると、表面が膨張したり、収縮したりして、破損につながります。
耐熱ガラスは、食器や調理器具を加熱してからすぐに冷却した場合の、急激な温度変化(熱衝撃)に耐えることができるガラスです。 

この他に、ソーダガラスに加工を施し、強度を高めた「強化ガラス」もコップや鍋フタとして販売されています。

強化ガラスは、加工方法から大きく4つに分けることができます。

特徴としては

・強度を高めたガラスで、普通のガラスの35倍程度の強度があると言われている

・あくまでも割れにくいだけであり、割れないわけではない

・「全面物理強化」と「全面積層強化」は、一瞬でガラス全面が細かい破片になって、激しく割れる場合がある (口部強化と全面イオン強化は通常のガラスと割れ方は変わらない)

などが挙げられます。

強化ガラスであるから、割れない、安心であるというわけではなく、適切に使用しなければ大きな事故につながる可能性があります。

 

  

2.ガラス製食器の事故事例

 ガラス製食器の事故事例について、2つほど紹介します。

 

<残留ひずみによるガラスコップの破損>

ガラスのコップを洗っていたところ、割れて手に怪我をした」という内容で2023年に重大事故に至った事例です。100万個以上の回収となり、大きな話題となりました。

ガラスコップを調査したところ、飲み口の近くに、製造工程の不備に起因したと考えられる、「残留ひずみ」がみられました。このことから、飲み口の近くに傷がついたり、力がかかったりした場合、通常のガラスコップより 割れやすくなっている可能性があることが分かりました。

参考)国民生活センター 「飲み口付近に残留ひずみがあり割れやすいガラスコップ」より

 

「残留ひずみ」とは、外からの力を除去した後でも物体内に存在する力(残留応力)のことです。

ひずみが残る原因としては、製造時に、「ガラスを高温状態から、急激に冷却することで外側が急に固まってしまったこと」や「ガラス内部の温度にムラがあり、均一に固化しなかったこと」などが挙げられます。

残留ひずみのあるガラスは、わずかな衝撃や力、傷などにより割れてしまう危険性が高くなります。残留ひずみは目では見えませんが、ひずみ試験機を使用することで確認することができます。

 

<強化ガラス製食器・調理器具の破損>

強化ガラスの破損による事故も問題となることが多く、国民生活センターや、消費者団体から注意喚起がされています。

・調理中に大きな音がして、強化ガラス製のフタに、くもの巣状の亀裂ができた。

・強化ガラス製ボウルを洗って水切りかごに置いていたところ、突然破損し、飛び散った破片で切傷を負い、天井と床にも傷がついた。

・お茶を入れて運んでいたところグラスが突然割れ、床に飛び散った破片で指に怪我をした。 

などが事例として報告されています。

参考)東京都くらしweb「強化ガラス製のキッチン用品や食器などの破損に注意!」より

鍋フタや強化ガラス製食器は、強化の種類(「全面物理強化」と「全面積層強化」)によっては、破損時に一瞬で粉々になることがあります。 

では、なぜ激しく割れてしまうのか、全面物理強化を例に説明します。

イラストのように、表面は「圧縮応力層」と言われる外からの力に耐えうる層が設計されています。

通常は、この層に囲まれて、製品全体が張りつめた状態になっており、外からの衝撃に耐えられます。しかし、衝撃等によって圧縮応力層に傷が入り、その奥の層(引張応力層)までキズが達した場合、力が開放され、力のバランスを崩し、激しい破損につながります。

 



 

 

3.ガラス製食器の品質管理のポイント 

 事故を起こさないように、安全性の確認は、どのようなポイントで行っていけばよいのでしょうか。今回は、海外より直輸入する場合や、OEM として他工場に製造委託し、PB 商品として販売する場合の確認事項について紹介いたします。

 いずれの場合も、商品の仕様、工場の製造・品質管理体制に問題がないか確認が必要です。
同様の製品で、事故事例がないか調査することも事故を防ぐ対応として重要となります。

実際の商品のチェックとしては、サンプル品や最終製品での確認や試験などが求められます。
ガラス製食器類は、食品に直接触れる器具・容器包装に該当するため、食品衛生法の規格基準への適合が法的に要求されています。
ガラスは、鉛やカドミウムなど有害物質が含まれているものもあるので、食事の際に、食器から有害物質が溶け出してくることがないか確認することが必要です。

強度等の確認は、日本産業規格(JIS)に基づいた試験を実施することが一般的です。
代表的な項目として3つ紹介します。

 

ひずみ試験(JIS S 2043、JIS S 2030)

試験方法: ひずみ試験機により、干渉縞がないかを調べる。

事故事例でも紹介した、残留ひずみがないか、ひずみ試験器にて調べることができます。干渉縞がはっきりと見えるものは、ひずみがあり、わずかな傷や衝撃などで割れてしまうことがあります。

 

熱衝撃試験(JIS S 2043、JIS S 2030)

試験方法: 用途ごとに指定された温度差(熱衝撃)を与え、ひび及び割れの有無を調べる。

ガラス製食器を温度差のある使用環境で使用した場合、問題がないか確認します。

温度差のある使用環境として、電子レンジであたためた食器を、熱いうちに水を張った洗い桶に入れることなどが想定されます。耐熱ガラス製食器に表示されている耐熱温度差は、耐熱温度(使用できる温度)とは意味が異なりますので注意が必要です。 

 

衝撃強さ(JIS S 2043)

試験方法: 開口部先端から5mmの位置に、指定の鋼球を100mmの高さから自然落下させ、目視により割れの有無を調べる。

商品に物理的な衝撃が加わったときに異状がないかを調べるものです。
例えば、乾杯をするとき、グラスには衝撃が加わります。想定される範囲での衝撃で割れてしまうものであればそもそも食器として成立しません。

商品そのもののチェックだけではなく、表示の確認も必要です。

耐熱ガラス製食器と強化ガラス製食器は、家庭用品品質表示法の対象品です。
家庭用品品質表示法とは、市場に流通している多種多様な商品について、消費者の商品選択や正しい使用に役立てるため、その商品にあった、表示事項を定めている法律です。
耐熱ガラスや強化ガラスであることは見ただけでは判断できないので、購入するときや使用する際に必要な下記の表示事項が定められています。

必要な表示事項については、消費者庁のホームページに掲載されていますので、確認するようにしてください。


【参考:消費者庁HP

耐熱ガラス(ほうけい酸ガラス又はガラスセラミックス製器具)

https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/household_goods/guide/zakka/zakka_22.html

 強化ガラス

https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/household_goods/guide/zakka/zakka_21.html

 

取り扱い上の注意は、法的に推奨されている内容に加えて、商品ごとに懸念される事項をわかりやすく表示することも大変重要となります。

また、定番品として、長期に渡り販売する場合には、発売後も定期的に確認することが品質管理としては重要です。委託先の工場内でいつのまにか「厚さの変更」や「材料が変更」などがされ、その情報が共有されていない場合など、後から問題となるケースも見られます。(サイレントチェンジ 

 

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4.まとめ

 ここまで、ガラス製食器の特徴や注意点について紹介してきました。
安全な商品を製造・販売するには、素材の特性、法規制を理解し、適切な品質管理を行うことが重要です。

 当社では生活雑貨品のコンサルティングサービスや検査を実施しています。
今回紹介したガラス製食器の試験の他にも、その商品として必要な試験項目や想定される使用方法を実際に試験として確認する実用試験なども実施しています。

また、各種表示の確認や、品質管理ご担当者様や店頭スタッフ様向けに、商品に関連する法律の講習会のご依頼も承っておりますので、お気軽にご相談ください。

 

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生活雑貨品の品質管理

食品以外にも雑貨品・衣料品の品質管理にも対応しています。 商品広告やパッケージの表示内容チェック、店舗や工場の点検など関連法規を遵守しながら品質管理をサポートします。

 

こちらのコラムは 第四コンサルティング本部 商品グループ が担当いたしました。

 

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