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微生物検査の精度管理ってなに?サーベイの必要性と流れ

微生物検査の精度管理ってなに?サーベイの必要性と流れ

商品の安全性、保存性、信頼性を示すために、様々な検査を行うと思います。食品では、微生物検査を行って細菌数や食中毒菌の有無を確認する事が多い事でしょう。
微生物の検査で得られた結果に対して、この結果は確かだろうか?検査時に何か失敗した影響があるのではないだろうか?と思われたことはありませんか?

今回のコラムでは、微生物検査の精度管理とサーベイの必要性と流れについて御紹介します。

1.サーベイの必要性は


自社の検査室で、自社の製品を検査している場合、検査結果に基づいて出荷の可否や商品回収の必要性を判断します。また、受入検査であれば、原料としての使用の可否、仕入先への改善要請に検査結果がつながります。前者の例であれば、製造を行った現場から、後者の例であれば原料メーカーから「自分の作った商品にはトラブルはなかった、検査に失敗があって菌数異常となったのではないか?」といった追及がある事も少なくないのではないでしょうか。

(1)少人数で検査を行うことのリスク


検査にコストがかけられる会社であれば、同じ検体を複数回、または複数名で繰り返し検査を行う事で、類似の検査結果を確認して結果を担保する事も可能でしょう。また、社外の勉強会に検査員を参加させたり、学会に参加する事を通じて最新の検査方法について知る機会を得る事も可能でしょう。しかし、多くの企業では、コスト削減の必要から非製造部門である検査部署に余裕のある予算を用意していないことが実情でしょう。さらには、専門性の求められる検査業務では人材の確保も難しく、一人の担当者の検査結果で全ての検査責任を負うことになり、検査精度を担保する事は難しくなります。

(2)検査員の力量の証明は難しい


検査員の力量の証明として、同じ検体を同じタイミングで検査し、結果を確認しようとしても、微生物検査においてはサンプルのばらつきがネックとなってしまいます。同時に検査して得られた結果が異なった場合、検査方法に問題があったのかあるいは、微生物汚染が強い部分とそうでない部分をサンプリングした事によるものなのか、結果から判断する事は難しいです。ましてや、検査する人員も限られた自社内だけで行った検査で、その結果を比較し、検査員として十分な力量ありと評価することは、難しいでしょう。

そして、それを第三者に対して開示するとなると、さらにハードルが高くなってしまいます。複数拠点を持ち、それぞれに行った結果をまとめて第三者に示したときに、それぞれの拠点で行っている検査が有効であるかという点においても、多くの場合、拠点が異なると検査対象とする検体の状態や、検査手法(検査に用いる器具や設備を含む)が異なる場合も多く、これらの前提条件の違いがネックとなります。このように検査員の力量を証明する事は、意外と難しい作業と考えられます。

(3)サーベイを行う事のメリット


販売先や製造委託元から、出荷した商品に問題がなかった事の証明として、定期的な細菌検査の結果の提出を求められる事があります。そういった取引先では、委託先の管理の一環として検査精度管理を行った結果を求められる事があります。また、検査を行う部署として、検査員の技量向上について、課題があるととらえている企業も多く見られます。これらについて、サーベイを行うことで以下のメリットがあります。

  1. 委託先からの要求に対して、サーベイを行った結果を開示する事で検査精度管理を行った証とすることができる。
  2. サーベイの結果から、検査員の検査精度が数値化されて確認できるので、より良い結果となった検査員から、操作時のポイントを聞いたり、その人の作業方法を標準化することで職場全体の検査精度向上が図れる。
  3. 結果が思わしくなかった検査員に対して、どこかに問題がなかったか、思い込みや勘違いで操作法に誤りがあるのではないかといった工程確認のきっかけにもつながる。
  4. サーベイを繰り返し行う事で、検査精度が安定しているかといった分析も行う事ができる。

2.サーベイの流れ


サーベイを行っている会社のHP、あるいはお取引のある試薬、検査資材取り扱い店などを通じて申し込みを行います。申し込みの案内やパンフレットに、サーベイの実施時期、対象となる菌種、試料の種類などが紹介されております。

(1)申込先の選定


サーベイをサービスとして提供している会社の例としては、自社で検査の受託を行っている食品分析検査企業、試薬や検査用資材を製造販売している企業、検査機器や分析装置の製造販売を行っている企業などがあります。また、サーベイの対象とする菌種は、一般的には一般生菌数・大腸菌・大腸菌群・黄色ブドウ球菌等が設定されています。菌数を対象とする定量試験の他、菌種の同定を対象とした定性試験が選択できます。

試料にも特徴があり、マッシュポテトのような固形の試料の他、スープ状になった液体の試料、バイオボールなど、多様な試料が用意されています。自社の検査に対してサンプリングから検体調整を行う操作(粉砕・計量・生食を加えてストマッキング等)についても確認する目的であれば、実際の食材に近い試料を用いて行う試験方法を実施できるサーベイを選択されると良いでしょう。

希釈や培地の選択、カウントなどの操作過程を確認する目的であれば検査に特化した試験方法を実施できるサーベイを選択されると良いでしょう。また、結果の報告では、合格、不合格の判断や、ヒストグラムを用いた全体の中の成績、必要に応じて結果に対する個別判断やアドバイスを行ってくれるサーベイもあるため、自社にとって必要な対応を行ってくれる会社を選定し、申し込みを行います。

(2)試料の受け取り


申込を行うと、試料が冷凍や冷蔵状態で届きます。検体の取り扱い説明書に保管温度や保管期間が記載されていますので、それに従って保管をします。受け取り後、すみやかに適切な温度帯で保管をしないと、試料の性状が変わってしまい、検査結果にも影響を及ぼすので注意が必要です。また、保管中も温度変化に注意し、高温の物を近づけたりして試料温度が上がりすぎないようにしましょう。

(3)検査の実施


試料に含まれる菌の種類、およびおおよその菌数が開示されている場合と、偽陽性を示す菌を含み、対象とする菌がどれだけ含まれているか、またその時の菌数がいくつだったかを問いかける場合があります。菌数は、適切な希釈を行い、正確な結果が得られる希釈段階を採用し結果を示します。菌の種類については、対象とする菌種の判定ができる適切な培地を用いて検査を行い、偽陽性コロニーを除外し該当する菌の菌数をカウントし結果を算出します。

希釈に不備があると菌数の定量結果に影響がでてしまいますし、培地の選択を誤ると、対象とする菌かどうかが判定できなくなってしまいます。当然、操作中にコンタミネーションを起こすと、結果を誤ってしまいますし、培養温度や培養時間に問題があると、本来カウントされるべき菌がコロニーを形成できずやはり菌数の結果に影響してしまいます。

(4)検査結果の解答


検査を行った結果を専用の解答用紙に記入して解答します。webで結果を入力する場合もあります。希釈を行った場合は、カウントした菌数に希釈した数をかけて結果とする必要があります。計算違いによる誤解答も評価の低下につながります。菌の種類のみ問われる試験では、どの菌が試料に含まれているのかを解答します。その判断にいたった根拠として、どういった培地でどのような検査を行い、どのように判定したかまでを解答として求められる場合があります。解答後は解答用紙を郵送あるいはwebで送信します。

(5)結果の受け取り


試験の結果は郵送または電子メール等で報告されます。試験を行った事業所に返送される場合と、管理を行っている本社部門にまとめて返送される事もあります(依頼者の希望によります)。試験の結果は原則試験を行った検査員について評価されます。結果判定の合否と、統計学的処理を行った正確性の程度が示される場合があります。

さらには試験実施の全体の傾向、結果が悪かった場合の原因分析などについても解説が付いた結果報告様式の場合もあります。同じ検体を用いて、様々な検査室が行った結果となるため、結果の比較を行う事で検査員や検査室の能力が客観的に評価・確認できます。

3.サーベイ結果の活用


試験の結果を受け取り、合格であった場合にも、それだけで満足しないようにしましょう。多くのサーベイを行っている会社では、結果に対する分析評価を行っています。検査員それぞれが、全体の中でどの程度正確な値に近い結果を導き出すことができたかを参考に、検査員間の誤差の把握につなげる事が出来ます。

結果の良かった検査員のやり方を標準化する事で、検査室全体の精度向上につなげられる場合もあります。ピペット操作の違いや試料液の吸出し、培地の分注、塗抹する検査であれば、塗抹のスピードや乾かし方などによっても区別されるべきコロニーが重なってしまって結果の誤差になる事があります。試験として判定力が問われる偽陽性の判定違いも結果に影響を及ぼすため、その見極め方について理解する事も必要となってきますので、問題なく操作、判定でき結果の良かった検査員から、どうやればうまくいくのか教えあう事につなげましょう。

使っている道具が検査員毎に専用化されているようであれば、ピペットの経年劣化などによって吸い上げる試料液の量に違いが生じることで、特定の検査員の結果に影響する可能性も考えられます。必要に応じて、ピペットの買い替えや精度確認の実施を行いましょう。

このような普段の検査業務では気付く事ができない検査精度についても、気付くきっかけになるように結果を活用していきましょう。また、安定した結果の評価が行えるサーベイでは、繰り返し行う事で結果の比較ができます。先述のような見直しを行い、再度試験に望む事で結果がより良いものになっていれば、検査室の力量が向上していることが評価できます。



4.BMLフード・サイエンスのサーベイサービス



BMLフード・サイエンスでは日ごろから様々な業態のお客様とお仕事をさせていただいております。そこで、弊社が行うサーベイでは様々な業態のお客様にご参加いただく事ができ、異なる業態の検査室の結果が反映される事となります。その中で、自社の検査室の力量の位置づけがどのようなレベルにあるかを知る事ができます。お申込みから、解答、結果の報告や成績書のダウンロードまでオンラインでご実施いただけます。

紙の報告書であれば紛失の恐れがありますが、web上での管理ではその心配がありません。解答の送信後も期間内であれば何度でも再入力(上書き)ができます。未提出(未解答)の場合は、期日の3日前にリマインドメールが届きます。さらに階層別閲覧権限を設定する事ができ、本社部門では各拠点の結果管理が可能です。「食品微生物検査の動作手順を動画やテキストで自習できるe-ラーニング研修」(有料)や、その他フォローアップ体制を用意しております。ご希望の場合は、弊社営業担当またはお問い合わせまでご相談ください。

 



5.まとめ


このコラムでは、微生物検査の精度管理とサーベイの必要性と流れについて解説しました。

微生物検査の精度管理は、検査結果の信頼性を保証するために不可欠です。検査員の技術力を評価し、少人数での検査に伴うリスクを最小限に抑える手段として重要な役割を果たします。このプロセスを通じて、自らの検査結果の精度を確認し、必要に応じて改善策を講じることができます。

BMLフード・サイエンスでは、食品衛生のコンサルティングを行っております。 厨房や工場の点検、監査から、関連法規に照らした食品等の表示確認、品質管理の仕組み構築や教育研修など、多種多様なサービスを提供しており、異物混入を防ぐための品質管理システムを構築支援することも可能です。

詳しくは、「食品コンサル」のページをご覧ください。

こちらのコラムは第二コンサルティング本部西日本グループBユニットが担当いたしました。
飲食店・厨房の衛生に関するコンサルティングの業務内容につきましては、「飲食店・厨房の衛生点検」のページをご覧ください。


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