ノロウイルスは、二枚貝等の食品や嘔吐物、汚染された手などから感染するウイルスです。嘔吐や下痢などの消化器症状を引き起こし、発症から24~48時間で自然に治ることが多いですが、重症化する場合もあります。感染力が強く、たびたび食中毒事故を引き起こすことが多いため、飲食店の従事者や食品工場勤務者、医療従事者などにおいて感染が確認された場合、出勤停止や食品を取り扱う現場から離す必要があり、管理者はシフトの調整や変更を余儀なくされます。
では、ノロウイルスに感染して出勤停止になった場合、いつから出社できるのでしょうか?ここでは、法律の規制、会社規則、検査での確認という3つのポイントから考えてみましょう。
1.ノロウイルスの特徴
ノロウイルスは、非常に感染力が強く、わずか10~100個のウイルスで感染すると言われています。また、消毒や加熱にも強く、冬場は特に流行しやすいです。主に二枚貝などの食品などを介して感染しますが、嘔吐物や便などに含まれるウイルスが空気中に飛散して吸い込んだり、物に付着したウイルスを触って口に入れたりすることでも感染します。感染後は、1~2日で発症し、嘔吐や下痢などの消化器症状が現れます。ほとんどの場合は自然治癒しますが、脱水や電解質異常などの合併症を起こすこともあります。また、発症後もしばらくは便中にウイルスが残るため、再感染や他人への感染を防ぐためには十分な手洗いや消毒といった感染防止策が必要です。
2.ノロウイルスで出勤停止はいつまで?-3つのポイント-
(1)法律の規制
出勤停止に関わる法律は「労働安全衛生規則61条」や「感染症予防法第18条」等が該当し、該当する感染症の場合は、感染症のまん延予防などを目的に就業制限が課せられます。ただし、ノロウイルスはこれらの法律の対象ではありません。
一方、労働安全衛生法、感染症予防法に基づく就業制限の対象にならない感染症に罹患している、または疑いのある従業員を出社をさせてもいい、というとそうではありません。 会社は労働契約法第5条に基づき、従業員に対して「安全配慮義務」を負っており、安全配慮義務の観点から職場での感染防止策を取ることが求められます。
労働契約法第5条(労働者の安全への配慮)
使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。
この義務を怠ったことによって、感染症の集団感染を引き起こした場合には、企業としてのイメージダウンに繋がります。
したがって、法令で就業制限されていない場合でも、必要に応じて出勤停止(休業)を指示し、感染拡大を防ぐことが求められます。
ノロウイルスの場合、以下のような状態であれば出勤を停止することが望ましいと言えます。
- 嘔吐や下痢などの消化器症状がある場合
- 消化器症状がおさまっても(無症状であっても)、検査において陽性が確認された・陰性が確認できない場合
- 同居家族や同僚などにおいてノロウイルス感染者が確認され、感染が疑われる場合
出勤停止期間は、たとえば以下の条件が挙げられます。
- 消化器症状が治まってから48時間以上経過し、検査で陰性が確認された場合
また、法令では無いため強制力はありませんが、大量調理施設衛生管理マニュアル(平成29年6月16日)では、以下のように定められています。
(4)調理従事者等の衛生管理
(中略)
④ノロウイルスの無症状病原体保有者であることが判明した調理従事者等は、検便検査においてノロウイルスを保有していないことが確認されるまでの間、食品に直接触れる調理作業を控えるなど適切な措置をとることが望ましいこと。
⑤調理従事者等は下痢、嘔吐、発熱などの症状があった時、手指等に化膿創があった時は調理作業に従事しないこと。
⑥下痢又は嘔吐等の症状がある調理従事者等については、直ちに医療機関を受診し、感染性疾患の有無を確認すること。ノロウイルスを原因とする感染性疾患による症状と診断された調理従事者等は、検便検査においてノロウイルスを保有していないことが確認されるまでの間、食品に直接触れる調理作業を控えるなど適切な処置をとることが望ましいこと。
これらを参考にしつつ、実際にはより安全性の高い手法として、会社規則や検査での確認によって出勤停止期間を決めている企業が多く有ります。
(2)会社規則
会社によってはより厳しい規則を設けている場合があります。
例えば、以下のような規則を設けている会社もあります。
- 消化器症状が治まってから72時間以上経過するまでは出勤停止とする。
- ノロウイルス感染者と接触した場合は、接触から72時間以上経過するまでは出勤停止とする。
- ノロウイルス感染者と同居している場合は、同居者の消化器症状が治まってから72時間以上経過するまでは出勤停止とする。
ノロウイルスの感染力や残存性、事故が起こった場合のリスクを考え、より厳しい安全対策を講じる企業もあり、これらの規則を遵守しなかった場合には厳しい処分を取ることもあります。そのため、自分の会社の規則を確認しておくことが大切です。
(3)検査での確認
会社規則に従って出勤停止期間を過ごしたとしても、必ずしもノロウイルスが完全に消えているとは限りません。実際には、消化器症状が治まってからもしばらくは便中にウイルスが残っていることが多く、再感染や他人への感染のリスクがあります。そのため、会社復帰の判断として、便中のウイルス検査を受けてもらうことが望ましいです。検査結果が陰性であれば、ノロウイルスを保有していないことが確認でき、安心して復帰の判断を下すことができます。
BMLフード・サイエンスのノロウイルス検査は埼玉県川越市の他、北海道札幌市、福岡県福岡市の三つの拠点で行っています。365日検査を行っており、持ち込み検査も受付していますため、一分一秒でも復帰の判断を行いたい企業様にとって、利便性に優れています。
3.ノロウイルス食中毒の予防方法は?
ノロウイルス食中毒を予防には以下のような方法が有効です。
- 食品を扱う前や食事前には必ず手洗いを行う
- 食品を扱う際には手袋やマスクなどを着用する
- 生ものや加熱不十分な食品は避ける
- 食器や調理器具などは清潔に保つ
- 嘔吐物などは速やかに処理し、周囲を消毒する
現場の従事者向けのお役立ち資料もご用意しております。ぜひご活用ください。
お役立ち資料ダウンロード(ノロウイルス食中毒)https://www.bfss.co.jp/use_fuldownload/norovirus.html
4.まとめ
いかがでしたでしょうか。
ノロウイルスに感染した場合、いつから出社できるのかは、法律の規制、会社規則、検査での確認という3つのポイントをおさえる必要があります。法律上は出勤停止日数はありませんが、会社は従業員の安全配慮義務を負っており、感染拡大を防ぐために出勤停止を指示することができます。会社によってはより厳しい規則を設けている場合もありますので、自分の会社の規則を確認しておくことが大切です。また、消化器症状が治まっても便中にウイルスが残っている可能性があるため、検査で陰性が確認されるまでは出勤しないことが望ましいです。ノロウイルスは非常に感染力が強く、食品や医療関係者にとっては重大な事故につながる可能性があります。自分の体調だけでなく、周囲の人々の健康や安全も考えて、適切な対応をしましょう。